これは大学の講義でも学生に伝えていることですが、ニュースは時代を知る窓であり、そこに見える風景は毎日、刻々と移り変わっていきます。大切なことは、世界がどの方向へ向かうのか、自分なりのシナリオを描きながら、次の展開に備えておくことだろうと思います。
その視点を養うには、毎日のニュースを知り、ときには歴史に学びながら、時代を見据える作業を重ねることです。たとえば米国が現代の「アメリカ・ファースト」のような外交政策を最優先したのは、今に始まったことではないからです。
この作業を重ねていくと、将来の様子がおぼろげながらに見えてくるはずです。新聞やテレビで知るニュースは生きた教材でもあるのです。
時代を見極める視点を持つことは、自らの生き方や職業を考えていく上でも大いに役立つでしょう。学生時代には学校や先生が防波堤となり、君たちを守ってくれましたが、これからは自らのアタマで判断し、人生を切り開いていかねばなりません。自分のことは、自分で守っていかなくてはならないのです。
人工知能(AI)の開発が急速に進み、人間の判断力や能力を超える日が来ると予測されています。しかし、自らの人生を決断するのは君たち自身です。人々があり得ないと考えていた出来事が起こる世の中だからこそ、時代を読むアンテナを高く張り、変化に備えておく必要があるのです。
好奇心と学び続ける意欲を失わなければ、きっと人生は豊かになるはずです。期待しています。
池上彰の大岡山通信 若者たちへ 2017年 激動の予感 時代見極める視点持とう|2017年4月3日日本経済新聞 から