第1に、受益者負担の強化である。授業料収入で最大限の増を、中期的に確保することである。外国人留学生の授業料も2~3倍にすればよい。国に対しては、収入増に伴う交付金減額措置を一切しないこと、家計からの授業料支出を所得税控除対象にすることを要望すればよい。国の財政状況に鑑みれば、施設整備に対する支援が追い付かず、残念ながら老朽化・陳腐化が急速に進むことになるので、私学と同様に、授業料のほかに、施設整備費を名目にした受益者負担を求める必要も強くなる。
第2に、産学連携による収入の強化である。このところ、国の重点施策としても展開されているので、経営方針として取り組みが既に強化されているとは思うが、適切に体制整備をした上で、大型の連携事業に持っていけるネタがどれほどあるのか、大学の実力が試される。国に対しては、大学が主体的にスタートアップに関与して、株式上場等で大きな利益が得られた場合に、研究活動を支える収入源にできるよう、仕組みの整備を要望すればよい。
第3に、寄付募集の強化である。国に対しては、大学への寄付を税額控除の対象にすることを要望すればよい。ふるさと納税のような仕組みが参考になる。
第4に、土地資産の活用による収入増である。国に対しては、特定目的会社への出資を可能にするよう要望すればよい。大学にとっては、資産の売却による一時的な収入よりも、毎年度の収入として当てにできる資産の貸し付けによる事業展開が合っている。それゆえに、単に土地を賃貸するのではなく、事業主体の一員として参加する形が可能になれば、収益最大化への工夫の余地が大きい。
第5に、附属病院の大学法人からの切り離しである。病院経営から収益が上がっていた時代は、大学本体にとって病院部門が存在するメリットがあったが、病院経営を黒字に維持することは容易ではなくなっている。岡山のように地域の病院群との一体経営に踏み込んでいるケースも出ているので、可能性として、病院部門(特に連続赤字の病院)の経営切り離しを認めるべきだろう。
第6に、教員人件費を運営費交付金ですべて支えることが難しくなっていることに鑑みて、教員個人が稼いだ外部資金収入の一部を組み合わせる給与構造を実現すべきである。産学連携収入はもちろん、科学研究費等の競争的資金も外部資金の一部として、教員人件費に活用すればよい。こうした構造改革により、若手の雇用拡大への資源を捻出できる。また、所得にある程度の格差が生じることは、刺激になるだろう。運営費交付金が伸びなければ、人事院勧告に準拠した給与体系を維持することは不可能であるが、外部資金収入を加えることで、貢献度に応じて、研究者それぞれに適切な所得を保障することができる。国にも、こうした新たなモデルを、交付金や競争的資金の制度に組み込むことを要望すればよい。
第7に、法人の経営規模を拡大することである。もはや1大学1法人に拘る意味はない。同じ地域に立地している国立高等専門学校と経営統合しても良いのではないか?公立大学はもちろん、私学とも経営面で連携したらどうか?実現には、国立大学法人法改正が必要になる。大学として生き残るのも大変だと思うが、それぞれ体力が失われてから、救済策として文科省が合併の仲介を始めるのを待つようでは、大学としてあまりにも無策ではないか?
以上は、私が気付いている論点であり、ほかにも経営強化の観点から、自由を求める提案があれば、国に対して出せばよい。もちろん、国立大学にとって運営費交付金は最重要の予算である。しかし、いかに現場から苦境を述べようとも、恒久的にその水準を維持することは難しい。したがって、その目減りを遅らせつつ、経営的には自立性を早く高めるしかあるまい。それが分かっているなら、その方向に即した要望を展開して、未来のビジョンに合った改革を直ちに進めなければならない。運営費交付金に拘って、経営のモデルチェンジを拱くことは、自滅への道ではないか?