2017年4月12日水曜日

記事紹介|天下り、解明なくば再発は防げまい

歴代事務次官3人を含めて処分者は計43人と文部科学省では過去最多の不祥事になった。一連の天下り問題で松野博一文科相が公表した最終報告は、組織ぐるみの国家公務員法違反を明らかにした。

松野氏直轄の調査は外部の弁護士などが当たった。しかし、いつ、誰が、どんな経緯で違法な再就職のあっせんを始めたのかは解明できていない。天下り先の大学などと文科省がどんな関係を築いたか、各種許認可や補助金配分などがゆがめられなかったのかという肝心な点も不透明なままだ。

それにしても文科省の順法意識の欠如には驚くばかりだ。2月の中間報告後、新たに35件の違法行為が確認され、2010年以降の違法案件は累計で62件に達した。これほどの不正に同じ役所にいる歴代文科相や副大臣、政務官が気付かなかったのも不思議な話だ。

08年12月末の改正国家公務員法施行で現役職員の天下りあっせんが禁止されたため、人事課OBの嶋貫和男氏を調整役とするあっせんの仕組みができた。ただし、62件のうち半数近い30件は嶋貫氏を介さず幹部や人事課職員が直接あっせんに手を染めたという。

処分は停職9人▽減給12人▽戒告4人▽訓告12人▽厳重注意9人(3人は重複処分)だ。元事務次官など退職者11人は処分できないため「停職相当」などとした。

天下り先は全国の国私立大、文教関係の団体や企業と幅広い。他省庁関連も旧経済企画庁出身者の新潟大への再就職、元外交官の東京外国語大特任教授再就職と2件あった。最終報告で全てなのか。

許認可や補助金を巡って不正な働き掛けがあったかどうかについて最終報告は、嶋貫氏が特別顧問を務めた学校法人グループの大学設置申請に関する審査状況を担当職員が人事課に漏らした以外には切り込めていない。

他省庁の調査は遅れている。今回の最終報告で幕引きとしてはならない。在職時に密接な関係にある企業や団体への再就職を一定期間禁止する規定を復活するなど再発防止策も検討を急ぐべきだ。