2017年4月2日日曜日

大学におけるデュアルユース技術に関する研究の在り方

科学者の代表機関である「日本学術会議」は、防衛省が「安全保障技術研究推進制度」を開始(平成27年度)したことなどから、「安全保障と学術に関する検討委員会」を平成28年5月に設置し、これまで、安全保障に関わる事項と学術とのあるべき関係等の課題について検討してきました。

そして、去る3月24日の幹事会において新たな声明を決定・公表しました。今後、4月13~14日の総会において、新たな声明及び検討委員会のとりまとめが公表される予定になっています。

防衛省は既に、平成29年度の公募を開始(公募期間:平成29年3月29日~5月31日)しており、各大学は、今後早急に、新たな声明に盛り込まれた「軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべき」への対応を検討しつつ、応募の可否を判断しなければなりません。

軍事的安全保障研究に関する声明|平成29年(2017年)3月24日 日本学術会議

<声明のポイント> 全文はこちら

  • 日本学術会議の1950年の「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明及び1967年の間じ文言を含む「軍事自的のための科学研究を行わない声明」の2つの声明を継承する。
  • 防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」(2015年度発足)では、将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家でなく同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い
  • 学術の健全な発展という見地から、むしろ必要なのは、科学者の研究の自主性・自律性、研究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実である。
  • 大学等の各研究機関は、軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきである。学協会等において、それぞれの学術分野の性格に応じて、ガイドライン等を設定することも求められる。
  • 科学者を代表する機関としての日本学術会議は、議論に資する知見を提供すベく、今後も率先して検討を進めて行く。


(参考)日本学術会議における軍事研究等に関する過去の声明

声明 戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明(声明)|昭和25年(1950年)4月26日 第6回総会

日本学術会議は、1949年1月、その創立にあたって、これまで日本の科学者がとりきたった態度について強く反省するとともに、科学文化国会、世界平和の礎たらしめようとする固い決意を内外に表明した。

われわれは、文化国家の建設者として、はたまた世界平和の使として、再び戦争の惨禍が到来せざるよう切望するとともに、さきの声明を実現し、科学者としての節操を守るためにも、戦争を目的とする科学の研究には、今後絶対に従わないというわれわれの固い決意を表明する。

声明 軍事目的のための科学研究を行わない声明|昭和42年(1967年)10月20日 第49回総会

われわれ科学者は、真理の探究をもって自らの使命とし、その成果が人類の福祉増進のため役立つことを強く願望している。しかし、現在は、科学者自身の意図の如何に関わらず、科学の成果が戦争に役立たされる危険性を常に内蔵している。その故に科学者は自らの研究を遂行するに当って、絶えずこのことについて戒心することが要請される。

今やわれわれを取りまく情勢は極めてきびしい。科学以外の力によって、科学の正しい発展が阻害される危強性が常にわれわれの周辺に存在する。近時、米国陸軍極東研究開発局よりの半導体国際会議やその他の個別研究者に対する研究費の援助等の諸問題を契機として、われわれはこの点に深く思いを致し、決意を新たにしなければならない情勢に直面している。既に日本学術会議は、上記国際会議後援の責任を痛感し、会長声明を行った。

ここにわれわれは、改めて、日本学術会議発足以来の精神を振り返って、真理の探究のために行われる科学研究の成果が又平和のために奉仕すべきことを常に念頭におき、戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わないという決意を声明する。