2018年3月28日水曜日

記事紹介|大学改革が目指すべき方向性

経団連の教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)は3月1日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、今後の大学改革が目指すべき方向性について、大学マネジメント研究会の本間政雄会長から説明を聞くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

終わらざる国立大学改革

国立大学改革は、戦後の新制大学発足以降、これまで数次にわたり行われてきた。近年では小泉政権下の「遠山プラン」(2001年策定)が挙げられる。同プランのもと、再編・統合の推進とそれによる国立大学数の大幅な削減、民間的経営手法の導入、第三者評価による競争原理の導入等が行われた。その後も、国立大学法人化(04年)や民主党政権下での大学改革プランなどがあり、その結果、01年に99あった国立大学は86まで減少するとともに、学長を中心とした運営体制の確立、外部人材登用による企業経営手法の導入などが推進されてきた。企業との共同研究による収入や特許料収入も約2倍に増えていることも踏まえると、形式的には大学改革は進んでいるようにみえる。

しかしながら実情は問題が山積している。統合・再編については、文部科学省が一定の指針を示さず、大学の自主的な検討に任せたため、一貫性のないちぐはぐな統合が見受けられ、教員ポストや入学定員は減少していないため、かたちだけの縮小になっている。事務職員の数も私立大学と比較すると明らかに多く、コスト意識や生産性において問題がある。さらに、外部理事の大半は文科省や大学関係者であったり、同省が任命する監事も実際は大学側が推薦しているケースが多かったり、経営目線をもった外部人材を登用できているとはいい難い。同省が13年に示した目標は、10年以内に大学ランキングトップ100に10校ランクインとしているが、途中経過ながら現状は極めて厳しい状況となっており、その達成は難しいとみている。

大学改革が目指すべき方向性

18歳人口は直近のピーク時に比べ半減しているが、国立大学学生数は60万人前後でほとんど減っていない。真に高い意欲と能力を持った学生の学びの場となるよう、戦略的にダウンサイジングするとともに、教育・研究機能を強化すべきである。例えば、旧七帝大や地方の基幹国立総合大学は学部を大幅に縮小し、研究に重点を置いた「大学院大学」に移行するのも1つの考え方である。また、大学の国際化やカリキュラム改革を進めるためには、優秀な外国人教員や教育力のある教員、若手研究者の採用が必要だが、多くの国立大学において教員人事を学部教授会が握っているため、従来型の人事に固執して給与の高い50~60代の教員の人件費を削減することができていない。事務組織・人事制度の改革の一環として、全学的な教員採用や評価基準を確立させることが喫緊に求められる。

<意見交換>

説明後の意見交換では、経団連側から「日本では大学を評価する基準はどうなっているのか」との質問があり、本間氏から、「現在の大学評価は文科省主導であり、身内が身内を評価しているようなものである。世界ランキング向上を目指すのであれば、グローバルスタンダードな評価基準体制を整備する必要がある」との回答があった。