2010年6月26日土曜日

効果的な研究支援に向けて

先日、文部科学省の予算監視・効率化特命チーム実務グループから、「研究費・プロジェクト系教育経費の効果的予算措置に向けた現状分析の実施に関するアンケートについて」と題する依頼が各国立大学法人に届きました。

依頼の趣旨は次のようなものです。

文部科学省においては、鈴木副大臣を主査とする予算監視・効率化チームの特命事項として、研究費・プロジェクト系教育経費の効果的予算措置の在り方について検討を深め、今夏の概算要求と併せて「予算制度改革要求」として、関係省庁に働きかけを行うこととしております。

この検討に当たり、本年6月3日から6月30日まで、文部科学省HP上の「熟議カケアイ」において「研究費を使いにくくしている問題点は何か」をテーマとして、熟議をスタートしております。これまでの熟議の中で、各研究機関(大学含む)の研究者の方々から、「研究機関では無駄な事務手続きや書類作成が多い」「クレジットカードが使えない」「各大学の旅費規程が国の規定を準用しており、国際会議等で必要な資金を支出できない」等の問題点が指摘されております。

文部科学省では、熟議上でご指摘いただいた問題点について、国の制度上の課題として現状分析を行うと同時に、各研究機関(大学含む)における現状の把握及びこうした制度を採用している理由について把握させていただくため、今回のアンケート調査を実施させていただくこととしております。

なお、今回の調査については、我が国の研究機関の中核をなす機関としての国立大学法人及び研究開発法人を対象として、アンケートを実施させていただいております。


アンケートは大きく次の4つから構成されています。

1 研究機関におけるクレジットカードの導入について

問題意識

研究機関におけるクレジットカード導入を望む研究者等からの指摘が数多く寄せられている(書籍の購入でクレジットカードを使用できない等)。既に国内外の一部の研究機関ではシステムの導入が進んでいるところ、その他の機関では何故導入が進まないのか疑問の声が挙がっている。

確認したいこと
  1. あなたの法人では、研究資金の使用にあたり、クレジットカードを導入していますか?
  2. クレジットカードを導入していない法人にお聞きします。すでに一部の研究機関でクレジットカードが導入されており、技術的には当該システム導入が可能であると考えますが、導入がなされていないその他の理由をご教示ください。
  3. 研究機関における効率的な予算の管理・運営の観点から、今後、研究機関におけるクレジットカード導入(若しくはシステムの改善)は推進すべきであると考えますか?
  4. また、研究機関へのクレジットカード導入にあたって、どういった点に留意する必要があると考えますか?
2 旅費規程について

問題意識

熟議上では、「各大学における旅費規程が国の規定を準用しており、国際会議等で必要な資金(ランチ代・バンケット代)を支出できない」との指摘がなされている。

確認したいこと
  1. あなたの法人では、国際会議等に係る旅費の規程について、どのような規定を設けていますか?
  2. 上記で回答された規定を採用している理由をご教示ください。
  3. 今後、各研究機関における旅費の規程について、どのような方向性で検討がなされるべきであると考えますか?
3 事務手続き等の効率化について

問題意識

熟議上では、「研究機関においては、無駄な書類作成や事務手続きが多い」等の指摘がなされています。こうした意見は、国の法令・各研究機関の制度・研究資金の使用ルール等の様々な要因が積み重なり、研究者の実感として当該意見が顕在化するものであると考えられる。

確認したいこと
  1. 上述の問題点を引き起こす原因として、国の制度(法令・予算制度・評価等)に係る手続きについて、改善すべき点をご意見ください(複数回答可)
  2. 自らの研究機関における手続き(内部の規定等)を省みた上で、今後改善すべき点についてご意見ください(複数回答可)。
4 その他

問題意識

熟議上では、「国・配分機関で自由度が制度上担保されているものの、各研究機関の規定によって使用制限がなされている」「こうした制度を変えようにも、多忙のため教授会等を経た正式な手続きを踏みようがない」「正式な手続きを踏んだとしても、会計・経理担当との関係が薄い」等の指摘がなされている。文部科学省としては、国の制度上の予算の柔軟性が担保されている一方、各研究機関における規則において自由度を認めない場合が存在している場合の対応について、苦慮しているところ。

確認したいこと
  1. 文部科学省及びファンディング・エージェンシー(JST・JSPS等)における研究資金に係る規定では自由度が認められているものの、各研究機関内における規定を理由としてそれを認めない事例はありますか?
  2. 認めない場合が存在する場合、その理由をご教示ください。
  3. これまでの質問にあったような研究資金の効果的な運用の在り方に限れば、各研究機関が決定すべき事項であったとしても、文部科学省及びファンディング・エージェンシー等が、各研究機関に期待する点を提示することが効果的であると考えますか?

大学における研究の更なる高度化を図っていくためには、効率的・効果的な「研究支援」が必要です。そのためには、コンプライアンス(法令遵守)や内部統制の確保を前提とした上で、裁量権にある程度の幅を持たせることが肝要であり、制度面の規制改革(研究費の柔軟かつ弾力的な執行)は重要だと思います。

ただ、そのことが単なる「研究者支援」になってはならず、研究者の利便性向上が、研究者の倫理感の欠如や事務職員の負担増を促すことにならないよう、様々な立場の方々の意見に耳を傾け制度設計されることをお願いしたと思います。