以下、抜粋し(必要に応じ注釈を加え)ご紹介します。
改正の趣旨
大学等が公的な教育機関として、社会に対する説明責任を果たすとともに、その教育の質を向上させる観点から、公表すべき情報を法令上明確にし、教育情報の一層の公表を促進すること。
改正の概要及び留意すべき事項等
第一 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)の改正の概要と留意点
1 大学(短期大学、大学院を含む。)は、次の教育研究活動等の状況についての情報を公表するものとすること。(第172条の2第1項関係)
(1)大学の教育研究上の目的に関すること。(第1号関係)
これは、大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)第2条(本省令による改正前の第2条の2)等*1に規定されているものであること。その際、大学であれば学部、学科又は課程等ごとに、大学院であれば研究科又は専攻ごとに、短期大学であれば学科又は専攻課程ごとに、それぞれ定めた目的を公表することや、平成19年7月31日付け文部科学省高等教育局長通知「大学設置基準等の一部を改正する省令等の施行について」で示した事項に留意すること。(2)教育研究上の基本組織に関すること。(第2号関係)
その際、大学であれば学部、学科又は課程等の、大学院であれば研究科又は専攻等の、短期大学であれば学科又は専攻課程等の名称を明らかにすることに留意すること。(3)教員組織、教員の数並びに各教員が有する学位及び業績に関すること。(第3号関係)
その際、教員組織に関する情報については、組織内の役割分担や年齢構成等を明らかにし、効果的な教育を行うため組織的な連携を図っていることを積極的に明らかにすることに留意すること。(4)入学者に関する受入方針及び入学者の数、収容定員及び在学する学生の数、卒業又は修了した者の数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況に関すること。(第4号関係)
教員の数については、学校基本調査における大学の回答に準じて公表することが考えられること。また、法令上必要な専任教員数を確保していることや、男女別、職別の人数等の詳細をできるだけ明らかにすることに留意すること。
各教員の業績については、研究業績等にとどまらず、各教員の多様な業績を積極的に明らかにすることにより、教育上の能力に関する事項や職務上の実績に関する事項など、当該教員の専門性と提供できる教育内容に関することを確認できるという点に留意すること。
その際、これらの情報は、学校基本調査における大学の回答に準じて公表することが考えられること。(5)授業科目、授業の方法及び内容並びに年間の授業の計画に関すること。(第5号関係)
就職状況については、働き方が多様となっている状況を踏まえた公表を、各大学の判断で行うことも考えられること。編入学を実施している場合には、大学設置基準第18条第1項*2の規定を踏まえつつ、編入学定員や実際の編入学者数を明らかにすることに留意すること。
これらは、大学設置基準第25条の2第1項等*3において、学生に明示することとされているものであること。その際、教育課程の体系性を明らかにする観点に留意すること。年間の授業計画については、シラバスや年間授業計画の概要を活用することが考えられること。(6)学修の成果に係る評価及び卒業又は修了の認定に当たっての基準に関すること。(第6号関係)
これらは、大学設置基準第25条の2第2項等*4において、学生に明示することとされているものであること。その際、必修科目、選択科目及び自由科目の別の必要単位修得数を明らかにし、取得可能な学位に関する情報を明らかにすることに留意すること。(7)校地、校舎等の施設及び設備その他の学生の教育研究環境に関すること。(第7号関係)
その際、学生生活の中心であるキャンパスの概要のほか、運動施設の概要、課外活動の状況及びそのために用いる施設、休息を行う環境その他の学習環境、主な交通手段等の状況をできるだけ明らかにすることに留意すること。(8)授業料、入学料その他の大学が徴収する費用に関すること。(第8号関係)
その際、寄宿舎や学生寮等の宿舎に関する費用、教材購入費、施設利用料等の費用に関することをできるだけ明らかにすることに留意すること。(9)大学が行う学生の修学、進路選択及び心身の健康等に係る支援に関すること。(第9号関係)
その際、留学生支援や障害者支援など大学が取り組む様々な学生支援の状況をできるだけ明らかにすることに留意すること。2 大学は、教育上の目的に応じ学生が修得すべき知識及び能力に関する情報を積極的に公表するよう努めるものとすること。その際、大学の教育力の向上の観点から、学生がどのようなカリキュラムに基づき、何を学ぶことができるのかという観点が明確になるよう留意すること。(第172条の2第2項関係)
3 1による教育情報の公表は、そのための適切な体制を整えた上で、刊行物への掲載、インターネットの利用その他広く周知を図ることができる方法によって行うものとすること。(第172条の2第3項関係)
4 大学の教育情報の公表に関する1~3について、高等専門学校に準用すること。(第179条関係)
第二 大学設置基準、高等専門学校設置基準(昭和36年文部省令第23号)、大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)及び短期大学設置基準(昭和50年文部省令第21号)の改正の概要
教育情報の公表に関する規定が学校教育法施行規則上整備されることに伴い、情報の積極的な提供に関する規定の削除など、所要の整理を行うこと。第三 学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令(平成16年文部科学省令第7号)の改正の概要
大学の総合的な状況に係る認証評価の大学評価基準に、教育研究活動等の状況に係る情報の公表に関することが含まれるものとすること。その際、上記第一の改正を踏まえ、大学評価基準が学校教育法施行規則に適合することとすること。(第1条第1項第1号及び同条第2項関係)第四 施行について
平成23年4月1日施行とすること。
(関連報道)
社説:大学情報公開 地域との連携の礎に(2010年6月21日毎日新聞)
大学など高等教育機関が来年4月から授業内容や入学、就職状況などの情報を公開するよう義務づけられる。当然のことだ。この徹底をバネに、地域に開かれ、連携する大学へ脱皮を図ってほしい。
私立では4割以上の大学で定員割れがあるといい、一部で募集停止も行われるなど少子化の中で経営環境は厳しい。国公立も財政難は深刻だ。現在770を超える大学の多くは、入学者を選ぶ側から選ばれる側に移りつつあるといえるだろう。
公開対象は、入学者数、卒業者数、進学・就職の進路状況、教員数やその学位と業績、年間の授業計画と方法、内容など9項目が挙げられた。これらが容易に分かるよう、ホームページや刊行物などで広く知らせることを求めている。これまで入試の合格者数しか公にせず、実際の入学者が定員を満たしているのか判然としにくい例もあったという。
授業内容の公開はどこまでという規定はないが、抽象的な項目を並べたものではなく、どのような方法で何を目的にした授業か、具体的に示さなければ公表する意味はない。
就職状況には経済環境で差異がある。構造的な不況と雇用不安がある地域と、就業機会に比較的恵まれた地域で有利不利が生じる、と大学側には公開に二の足を踏む声もある。
しかし、大学で学んだことを将来どう生かせるかと考える志願者側には絶対必要な情報であり、実態を開示するのは当然だ。
これは大学と地域社会の密接な連携という、これからの大学運営に不可欠の課題にかかわってくる。大学が高度な教育研究機関として超然と存在しておればよかった時代はとうに過ぎた。今や5割を超す進学率ながら、少子化で大幅な学生数増は見込めず、数字の上では「全入時代」と呼ばれる状況になった。全体的な学力低下傾向も指摘されて久しい。
「大学の存廃は淘汰(とうた)に任せよう」という意見もある。だが、その前に大学と地域や産業界が人材育成についてどれほど意見を交わし、議論しているだろう。また生涯学習や「学び直し」の機会を提供する地域の教育機関としても活用できるはずだ。
地域も大学をもったいない公共の財産として生かすべく知恵を絞ろう。実際、卒業生や社会人に再教育の機会を継続的に提供し、成功している大学は少なくない。
今「キャリア教育」の必要性が盛んにいわれる。まだその体系は整っていないが、自分にマッチした職業の選択、そこに生きがいを見いだし創造していく意欲や力の育成といったものだ。開放された大学と地域の密接な協力、交流、活用はその大きな支えにもなるはずである。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100621k0000m070086000c.html
*1:第2条:大学は、当該大学における教育研究活動等の状況について、刊行物への掲載その他広く周知を図ることができる方法によって、積極的に情報を提供するものとする。第2条の2:大学は、学部、学科又は課程ごとに、人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的を学則等に定め、公表するものとする。
*2:第18条第1項:収容定員は、学科又は課程を単位とし、学部ごとに学則で定めるものとする。この場合において、第26条の規定による昼夜開講制を実施するときはこれに係る収容定員を、第50条の規定により外国に学部、学科その他の組織を設けるときはこれに係る収容定員を、編入学定員を設けるときは入学定員及び編入学定員を、それぞれ明示するものとする。
*3:第25条の2第1項:大学は、学生に対して、授業の方法及び内容並びに一年間の授業の計画をあらかじめ明示するものとする。
*4:第25条の2第2項:大学は、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たつては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがつて適切に行うものとする。