2014年8月17日日曜日

介護離職と2025年問題

「突然親が介護に!仕事はどうする!?」(2014-08-06 日経ビジネス)から抜粋してご紹介します。


「介護離職」という言葉が聞かれるようになりました。少子高齢化時代の本格化を前に、働き盛りの40~50代が親の介護に直面する事態が急増しています。仕事と介護の両立は大きな課題です。まずは以下のAさんのケースをお読みください。あなたにとっても、決して他人事ではないはずです。

埼玉県に住むAさん(45歳)は毎週末、郷里に住む母の面倒を見るため、新幹線に乗って静岡県へ向かう。普段は母の家の近くに住む兄夫婦が主に面倒を見ているが、兄夫婦一家には小学生の子供たちがいる。「子供たちの学校も休みだし、週末くらいは介護から離れたい」と半年前に頼まれ、引き受けるようになった。兄弟同士、介護の分担も平等にしたいとする兄夫婦の主張を受け入れた形だ。

Aさんはメーカーの営業マン。出張であちこち回ることが多いため、移動は苦ではない。だが週末の休みを使っての介護は、続けるとなかなか辛いものがある。片道3時間近くかけて土曜日の午後、母の住む実家に到着。その後入浴や食事の介助を含めた身の回りの世話を泊りがけで日曜日の夕方まで行う。そして日曜日夜9時前に埼玉の自宅に戻る。月に1回は妻が代わりに行ってくれるが、妻は実家の勝手が分からない上、車が運転できない。本数の少ないバスに乗るか、兄夫婦に送迎をお願いする形になってしまう。そのため週末の介護はAさんがメーンにならざるをえない状況だ。

79歳の母は足腰が弱い上、軽度の認知症を患っている。2011年に認知症と診断され、2013年の夏ごろから徘徊が始まった。今のところ、大事に至ったことはないが10キロ離れた所で見つかったこともある。そのため、徘徊が始まってからは誰かが必ず交代で泊まり込みで母の家にいなければならなくなった。施設への入所も検討したが、入居金や利用料が高めの老人ホームは家計的に厳しい。特別養護老人ホームやグループホームは常に待機待ちの状態で、入れるのはいつの日になるか分からない。今のところ、週3回のデイサービスを利用することで何とか負担を軽減することができている。

「週末介護が始まってから、疲れが取れず、仕事にも集中しづらくなった。休みの日に自分の子供たちを遊びに連れて行くこともできない。だが、介護は子供として続けなければならない義務」と、Aさんは話す。

「2025年問題」で介護が急増?

Aさんのように、働きながら介護を続ける人は年々増え続けています。「2025年問題」と呼ばれる団塊世代の高齢化が本格化する中で、要介護認定者が今後さらに増えるのは確実です。一方で、少子化で介護の担い手は減り続けます。一人っ子が両親の介護を一手に引き受けるなど、負担を抱え込んでしまうケースも少なくありません。Aさんのように「週末介護」で対応できるのはまだ良い方かもしれません。最悪、介護を理由に離職せざるを得ない場合もあるからです。

総務省の「平成24年度就業構造基本調査」によれば、働く介護者は291万人。その中心は40~50代で、男性131万人、女性160万人となっています。同調査では、過去1年間(2011年10月~2012年9月)に介護・看護を理由とする離職者は10万1000人でした。生産年齢人口が減少していく中で、介護離職が増加していくことは、日本経済にとってもゆゆしき事態です。

離職を防ぐためにも、働く介護者を支える両立支援は必要になります。ただ、その環境は十分整っているとは言えません。企業および行政が取り組むべき課題はどこにあるのでしょうか。