記事紹介|教学マネジメントとは
教学マネジメントの必要性及び背景
現在、我が国の大学進学率は50%を超えており、少数エリートが通っていたかつての大学のあり方とは大きく異なっている。18歳人口が大幅に減少し、いわゆる大学全入時代となった今、従来型の「入難出易」の大学教育モデルが維持できない状況になるとともに、これまでの雇用慣行を見直す中で、ポテンシャル採用からジョブ型採用への転換や、学修成果を活用した採用活動が広がりをみせ、これまで以上に、大学における学修が重要視されつつある。そのような状況下において、依然として、大学生の学修時間が少ない状況が続いている(東京大学の調査によると過去十年間、1週間の学生の授業外学修時間平均は6時間程度で推移している)。
このため、成績評価の厳格化や卒業認定の基準の明確化・管理により、卒業時の出口保証を徹底しようという機運が高まり、中央教育審議会から平成20年に「学士課程教育の構築に向けて」(答申)や平成24年の「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」(答申)等が示された。ここでは、学士号に保証される能力の内容を定義し、その内容を身に付けるための具体的な取組例として、「学位授与の方針」や「教育課程の編成・実施の方針」に基づき、「教学マネジメント」を確立させ、学位プログラムごとに、教育の質保証を行っていくことが求められてきた。平成30年の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(答申)でも同様の課題が指摘されていたものの、大学教育改善に関連する手法等は、教学マネジメントの観点からは、一元的に整理されたものとなっていなかった。このため、教学マネジメント指針の策定により、大学運営のあり方において、教学マネジメントをシステムとして組み込むことを提言するに至った。
教学マネジメントの概要
教学マネジメントは「大学がその教育目的を達成するために行う管理運営」と定義できる。教学マネジメント指針は、「三つの方針」(特に「卒業認定・学位授与の方針」及び「教育課程編成・実施の方針」)に基づき、「学修者本位の教育」への転換を図るための教育改善に取り組みつつ、社会に対する説明責任を果たしていく大学運営、教学マネジメントが図1(「教学マネジメント指針」概要)で示したようなシステムとして確立している状態に向け、各大学の真剣な検討と取り組みを促すことを目的として策定された。その各論について、以下を参照されたい。
図1 「教学マネジメント指針」概要
学長のリーダーシップ
これらの取組を実施する上で、学長のリーダーシップが決定的に重要になる。特に学長は「学部等の学内組織の縦割りを超えて、学部横断的な共通基盤を創ること」や「大学全体、学位プログラム、授業科目レベルの各取組間の整合性を確保し、必要な指示や報告、情報が円滑にやりとりされる環境を構築」するなど、学長のリーダーシップや権限が不可欠な課題から取り組むべきである。例えば、各学位プログラムレベルで、カリキュラムマップを作成し、授業科目を精選し、真に必要な科目を絞り込むなど、大規模な開設授業科目を整理する際には、学長がリーダーシップを発揮し、各学部の教授会を説得することなくしては実現できない。文部科学省としても、こうした取組を推進するために、今年度より知識集約型社会を支える人材育成事業メニューⅢ「インテンシブ教育プログラム」を新設し、学長のリーダーシップの下、科目を精選・統合し、短期集中で学修を完結させ、各学期で「何を学び、何を身に付けることができたか」を学生が認識できるような「学修者本位の大学教育」への転換に向けた取組を支援しており、我が国の大学において、教学マネジメントの確立が推進されるよう取り組んでいる。
ポストコロナ期における新たな大学教育への期待と教学マネジメント指針
令和2年1月に「教学マネジメント指針」が策定されてから、約1年半が経過しようとしている。昨年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、直接現場と意見交換を行う場を設けることができなかったが、昨年度、文部科学省が実施した「教学マネジメントの確立に資する事例の把握等に関する調査研究」を実施する過程で、各大学において教学マネジメントを確立するための様々な取組が進められていることを確認することができた。
コロナ禍において、より質の高いニューノーマルな大学教育の実現を目指すべく、中央教育審議会や教育再生実行会議で御議論をいただいており、そうした新たな教育手法を効果的に取り入れる前提として、教学マネジメントがシステムとして組み込まれ、教育プログラムを実施する土台が確立していることが求められている。具体的には、遠隔授業を導入する際、カリキュラムの中で、どのように位置づければ効果的なのかを検証し、効果的な教育課程を編成することが求められている。
教学マネジメント確立に向け、事例・動画集を作成
教学マネジメントを確立し、しっかりと学生の学修の質保証を図ることが、各大学の強みや特色をさらに伸ばすことにもつながる。
各大学の特色を生かしながら「卒業認定・学位授与の方針」を策定し、「何を学び、何を身に付けることができたか」に関する客観的な教学データを学生に提供し、学生が自信を持ってそれを社会に説明できるようにする。そして、企業側でも採用にあたって、しっかりと学修を評価するという相互の好循環を生み出すことが、これからの大学教育の質保証の在り方と考えられるのではないか。
事例集や動画集については、下記リンク先に掲載しているので、是非御覧いただきたい。これらを参考に各大学における取組が加速することを大いに期待している。
※なお事例集・動画集は以下のリンク先より御覧いただきたい。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360_00001.html
※1 教員が授業内容・方法を改善し向上されるための組織的な取組の総称。
※2 職員全員を対象とした、管理運営や教育・研究支援までを含めた資質向上のための組織的な取組を指す。


コメント
コメントを投稿