2012年5月10日木曜日

創造性を高める「重荷主義」(土光敏夫)

私はだいたい、人は能力以上に働かなければならないという重荷主義を信奉する。その人が百キロのものが持てるとすれば、百二十キロのものを持たせ、百二十キロが持てれば、百四十キロを持たす。人間を能力以下に置くのは、むしろ罪悪である。人間尊重とは、ヘビー労働をかけ、その人の創造性を高めることだ。

やり甲斐、働き甲斐は、やってみてはじめて出てくる。やりもしない、働きもしないで、どうしてそのような喜びが得られるだろうか。生き甲斐にしてもそうだ。精いっぱい生きる努力をして、はじめて生きる喜びを知るのだ。

遊んでいて金がもらえるような仕組みを放置する経営者は、人間尊重をしていない経営者といえる。ただし、「働け」「より創造性を高めろ」と、口でいうだけでは責任ある行動とはいえない。そのための場を与え、きちんとレールを敷いてやるのが、経営者の役目だ。


日本経済新聞社
発売日:1983-01