具体的には二つの方法がある。一つは、すでによく行っていることをさらによく行うこと、すなわち改善である。もう一つは、それまでとは違うことを行うこと、すなわちイノベーションである。いずれもが重要である。
イノベーションに力を入れ改善を怠ることは間違いである。次のステップを可能とする小さなステップを見つけ続けていかなければならない。もちろん改善にばかり力を入れ、やがてイノベーションを行うべき時がくることを忘れることも、同じように愚かというべきである。
イノベーションは自己開発には不可欠のスキルである。しかも問題があるときではなく、うまくいっているときにこそイノベーションは行わなければならない。日常の仕事を注意深く見て「いま知っていることをみな知っているとして、いまこれを始めるか。成果を生んでいるか、安逸を貪っているだけか、成果を期待しえないことに力を入れているのではないか」を問わなければならない。
歩む道を変え、違う世界を見、新しい目的地に向かうとき、自己刷新がもたらされる。うまくいっているときこそが、外からの助け、良き師の助けが必要なときである。成果をあげるほど、目の前の仕事、緊急の仕事に没入しているおそれがある。そのとき、経験豊かな師が、「それは意味のあることか。自らの最高のものを引き出しているか」を聞いてくれる。
貢献の能力の向上には具体的な方策がある。例えば、教えることが最高の方法の一つである。先生のほうが生徒よりも多くを学ぶ。もちろん誰もが教える機会をもてるわけではない。教えることがうまいわけでもない。楽しんで教えられるわけでもない。しかし、誰でも似た機会はもてる。他人の能力向上を助ける機会はいくらでもある。部下や同僚の成果を向上させることに正面から取り組んだことのある者ならば、教えることが、自らの能力の向上にどれだけ役に立つかを知っているはずである。
能力の向上のための方法のひとつとしては自己採点がある。私の経験からすれば、これは謙虚さを学ぶ最善の方法でもある。私にとっては、できたはずのことと、実際にできたことのギャップを目にすることほど辛いことはなかった。しかしさすがの私も、この自己採点のおかげで目標の立て方や成果のあげ方を徐々にではあるが進歩させることができた。自己採点は、貢献の大きな分野に焦点を合わせ、貢献のできない分野、クライアントや学生の時間を浪費させるだけの分野には手を出さないようにするうえでも役に立った。
自己開発は哲学でも願望でもない。それは人としての成長である。同時に、貢献の能力の向上である。したがって、私はあなたに「明日何をしますか。何をやめますか」とお聞きすることによって本書の結びとしたい。