2012年5月12日土曜日

大学では遅すぎる?

前回に続き、IDE(2012年5月号)「取材ノートから」の記事を抜粋してご紹介します。


大学教育を考える上で暗澹たる思いになる調査結果が相次いだ。

日本数学会は、昨年4-7月、全国の国公私立大学48大学生の新入生ら約6千人を対象に数学力テストを実施した。出題は統計や論理、代数など5分野から小中高で習う基本問題を出題。約4割は理工系学生だ。

驚いたのは平均の定義と性質を尋ねた問題。「生徒100人の身長の平均が163.5cmだった。この結果から確実に正しいと言える事には○、そうでないものは×を付けなさい」という問いで、1)身長が163.5cmより高い生徒と低い生徒はそれぞれ50人ずついる、2)100人全員の身長を足すと16,350cmになる、3)身長を10cmごとに区分すると、160cm以上で170cm未満の生徒が最も多い--の3つを○×判定させた。当然2)以外は×だが、3つとも正しく答えた大学生は76.0%に過ぎなかった。驚かされる事項は他にも多くあるが、切なくなるので以下、省略。

もう1つは日本青少年研究所の高校生意識調査。昨年6-11月、日米中韓4カ国の高校生計約8千人を対象に行った。「将来も含めて海外留学したい」と考える高校生は、韓国82.2%、中国58.2%、米国52.9%に対し、日本は最低の46.1%。日本の高校生の「留学したくない」理由(複数回答)は、「自分の国が暮らしやすい」(53.2%)、「言葉の壁がある」(48.1%)、「外国で一人で生活する自信がない」(42.7%)の順。「経済的に難しい」を挙げた高校生は、日本は19.5%に対し、米国46.5%、中国43.3%、韓国43.1%。「面倒だから」は、日本38.5%、米国15.7%、中国33.0%、韓国31.7%の順だった。

いずれも大きく報道されているので、詳細は述べないが、「人材の高度化」とか「グローバル人材の育成」という議論が何とも空虚に聞こえる調査結果ではないか。「今の若者は・・・」と批判する前に、この国の学校教育はどこかで大きく誤ったことを素直に認めたい。大学も初中教育の話だと無関心は許されない。5割以上が4年制大学へ進み、短大や専門学校も含めれば高校生の7割以上が進学する現実を前に、小中高大を見通した学校教育の在り方を見つめ直す時期に来ている。(日本経済新聞社編集委員 横山晋一郎)