2019年8月16日金曜日

根強く残る昭和の発想

幾分前にあったこと(とある大学職員から聞いた話ですが)。

学生のキャリア支援の一環として、ある大学教員から、学生ベンチャーによるキャリア支援イベントの紹介があった。

多様な職業選択や働き方が求められている時代、学生たちが、OBの先輩たちとのコミュニケーションを通じ、様々な考え方を耳にし、自らの将来を考えるとてもよい機会になるのではないかと考え、早速、キャリア支援の担当責任者(教員)に開催に向けた検討をお願いした。

しかし、結果は「本企画の受入は適当ではない」との回答。つまり「NO」である。理由は次のとおり。

  • 学生が、自由な発想のもと、起業することは活発な活動で結構なこと。
  • しかし、本学の学生のキャリア形成について、それを支援する活動が企業による営利活動になじむかどうかは判断の分かれるところ。
  • 本学のOB、OGは多数おり、本学関係部署からの依頼により、適宜説明が行われている。
  • キャリア形成に関する内容は、本学が主体的に実施すべきことであり、かかる企業に一任、あるいは一部一任を認めるべき内容ではない。
  • 認めた場合、支援のつもりでなされた行為や言動について、当事者はどう責任を負うのか。
  • また、LINE、SNS等を多用し「感覚」や「気軽」さで、本学学生に対処されてはたまったものではない。これらの相互のやり取りは便利さがある反面、講演、セミナーなどでの公開されたやり取りと違って、慎重な判断が求められる。
  • キャリア支援に関しては本学の主体性が損なわれることはあってはならないと確信している。


キャリア支援の担当責任者という立場上、当該教員の気持ちはわからなくはない。

しかし、今や大学ではキャリア支援の在り方が大きく変化している中で、また、学生自身もweb等を通じて様々な情報を自由に入手できる時代にあって、旧来からの教員主導のキャリア支援の考え方をかたくなに維持し続けていることが、本当に学生達のためになっているのか、甚だ疑問。

また、何事も慎重かつ保守的に物事をとらえる風土(とりわけ「ベンチャー」に対する無理解と軽視の感覚)が未だに根強く存在していることにも大きな違和感を覚えた。

このような新たな発想によるイベントを教員主導で実施しているところも少なくないと聞く。今回紹介したような大学は、all Japanで見たときに、何事についても後れをとっているのではないだろうか。

担当責任者である教員の判断なので、あきらめざるを得ないだろうが、当該大学職員は、自分の大学の在り様に、さぞや落胆し忸怩たる思いをしていることだろう。