2018年12月28日金曜日

記事紹介|心の品格

世の中に必要だと思うが、自宅の近くはやめてほしい。迷惑施設の場所探しで決まって出てくる「総論賛成、各論反対」の考え方。ノット・イン・マイ・バックヤード(自分の裏庭には来ないで)の頭文字でNIMBY(ニンビー)とも呼ばれる。

米軍普天間飛行場の県外移設を阻む厚い壁だが、子どもへの虐待防止のよりどころとなる児童相談所の開設で、東京の一等地、南青山がもめている。地元住民の一部の反対理由は「南青山に児相は似合わない」

住民説明会では「物価や学校のレベルが高く、施設の子が来たらつらい気持ちになる」「土地の価値を下げないで」などの意見が出た。排他的なブランド意識の強さは相当なもの。

そもそも児相で不動産価値は下がるのか。住宅評論家の桜井幸雄さんは「児相による影響事例を探したが、見つからなかった」と分析している。

昨年度、全国で児童虐待は13万件を超え過去最多。目黒区で船戸結愛ちゃん=当時(5)=が亡くなった事件後、政府は児相の体制強化を急ぐ。高級住宅地のセレブなら、心の品格こそ必須条件では。

親に命じられた結愛ちゃんは朝4時に起き、ひらがなを練習した。〈もうおねがい ゆるして おねがいします〉。ノートにつづられた幼い字。まだ明けぬ暗闇で彼女がみた絶望を私たちは忘れてはならない。

大弦小弦|沖縄タイムス から