2010年11月8日月曜日

国立大学法人の業績評価結果が公表されました

去る11月5日(金曜日)、文部科学省の国立大学法人評価委員会は、国立大学法人の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果を公表しました。

国立大学法人では、法人化以降、中期目標・中期計画(6年間)に基づき作成した年度計画の達成状況について、毎年度、評価委員会による評価を受けています。

評価委員会は、「業務運営の改善・効率化」、「財務内容の改善」、「自己点検・評価及び情報提供」、「その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理等)」の4項目について調査し、その結果を5段階で評価しています。

今回の評価結果は、第一期中期目標期間の最終年度である平成21年度に関するもので、評価委員会は、「各法人が、中期目標・中期計画の達成に向けて、基本的には順調に進捗している」との総括を行っています。

具体的な内容が文部科学省のホームページに掲載されてありますので、抜粋してご紹介します。

国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成21年度に係る業務の実績に関する評価について(国立大学法人評価委員会委員長所見)

国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成21年度に係る業務の実績に関する評価の概要(抜粋)

平成21年度は第1期中期目標期間の最終年度に当たり、それぞれの法人が、中期目標・中期計画の達成に向けて、基本的には順調に進捗している。

業務運営の状況では、それぞれの法人において、学長・機構長のリーダーシップの下、様々な改革がなされ、取組として定着してきており、平成21年度については、平成20年度と比較して、教職員の個人評価結果を給与等処遇へ反映している法人が大幅に増加している。

一方、様々な背景があるものの、大学院専門職学位課程において、一定の学生収容定員の充足率を満たしていない法人が見られた。

教育研究の状況では、それぞれの法人の特色に応じた教育研究活動の活性化や地域社会等への貢献に積極的に取り組んでいる。

1 業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善・効率化

(主な状況)
  • 教職員の個人評価結果を給与等処遇へ反映している法人が平成20年度と比較すると14法人(28%)増の64法人(71%)と大幅に増加しており、全体の7割を超えている。

  • 学長・機構長の判断により適宜活用できる人員枠を83法人(92%)が設定し、平成19年度から9割以上で推移しており、取組として定着してきている。

  • 経営協議会における学外委員からの法人運営に関する意見を基に、全法人で具体的に改善した事項が見られた。このうち、今回初めて調査した結果では、40法人(44%)が経営協議会における学外委員からの法人運営に関する意見について、取組事例を公表している。

  • 大学院修士課程及び博士課程において、一定の学生収容定員の充足率を満たしていない法人は、平成20年度と比較すると修士課程が1法人(1%)減少、博士課程が6法人(8%)で同数となっている。

  • 大学院専門職学位課程において、一定の学生収容定員の充足率を満たしていない法人は、教職大学院が6法人(14%)、法科大学院が4法人(9%)となっている。教職大学院については、1)制度創設間もないこともあり、教職大学院の特色や期待される効果に関し十分な理解が得られていないこと、2)自治体の財政事情による教育委員会からの現職教員の派遣の伸び悩みなどが、法人からのヒアリング等で指摘されており、それぞれの法人において、教育委員会との連携をさらに深め、適切な入学者の確保に努める必要がある。
(2)財務内容の改善

(主な状況)
  • 外部資金等の獲得額に応じて研究支援者を雇用できる等、外部資金等の獲得のためにインセンティブを付与する取組が、平成20年度から全法人で行われており、取組として定着してきている。

  • 財務分析において、他法人との比較を行い、その結果を法人運営の改善に活用している法人が増加している。

  • 近隣の国立大学等との間で、物品の共同調達を実施し、一括購入による経費削減・合理化に向けた取組が広がりつつある。【東北大学、宮城教育大学、山形大学、福島大学 等】

  • 学生支援等を目的とした基金を新たに設立し、教職員、地域及び企業等に広く財政支援を依頼し、寄附金収益の増加に向けた取組が広がりつつある。【東京学芸大学、奈良女子大学 等】
(3)自己点検・評価及び情報提供

(主な状況)
  • 国際的視点からの外部評価として、アジア圏で初めて、欧州大学協会機関別評価プログラムを受審し、この評価による助言を全学で共有するとともに、改善に向けて取り組んでいる。【東北大学】

  • 定期的なウェブサイトのデザイン・構成等の見直しにより閲覧性の向上や情報提供の迅速化を行い、民間調査機関から「使いやすさ」が評価を得られているなど、より良い情報発信ツールになるよう取り組んでいる。【東京農工大学、徳島大学 等】
(4)その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理等)     (主な状況)
  • 共同研究のリエゾンオフィス等に活用するための共同利用スペースを確保するなど、既存施設の有効活用について、平成19年度から全法人が取り組んでおり、取組として定着してきている。

  • 法人全体で省エネルギーを目的とし、高効率化機器への更新等を行い、CO2排出量削減に大きな効果が得られている取組が見られる。【東京大学、京都大学、高エネルギー加速器研究機構】

  • 研究費の不正使用防止のための取組については、全法人においてガイドラインや関係規程の制定等、体制・ルールが整備されているものの、2法人(2%)について適切な運用がされていなかった。
2 教育研究等の質の向上の状況 

引き続き、多くの法人において、法人化による環境の変化を積極的に活かし、指導方法の改善・充実、教育活動の個性化・特色化、学生支援体制の整備等の教育改革、各法人の特色に応じた研究活動の活性化や産業界や地域社会等への貢献に積極的に取り組んでいる。

4 附属病院

附属病院においては、深刻な医師不足問題や地域の医療崩壊に対応し、救急医療や周産期医療体制等の機能強化等、重要な役割を果たしている。

一方、診療業務の増加等により、教育・研究への支障が懸念されている状況においても、将来の医療を担う人材養成のために多彩な教育研修プログラムを提供して充実を図るとともに、新しい診断・治療法の研究開発等の実施に取り組んでいる。

各附属病院は、施設設備整備のための多額の債務借入金の返済、附属病院運営費交付金の削減等、依然として財政状況が厳しい中でも、引き続き、教育研究活動の発展と、地域からの要請も十分踏まえた高度医療の提供等、今後とも特色ある取組が求められている。

特に、総合的な診療能力を身につける医師を養成するためにも、卒前・卒後を一貫した人材養成プログラムの提供や、より一層の地域医療機関等との連携が必要である。

また、管理会計システム等を活用した経営分析による財政基盤の強化や医師と他の医療従事者等との役割分担により、医師等の勤務環境の改善を図るなど、今後もさらなる教育研究の充実に向けた取組が期待される。


各法人の評価結果
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/1298836.htm


(関連記事)

国立大評価、7校が「やや遅れ」=9割は「順調」-文科省 (2010年11月5日 時事通信)
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国立大の中期目標、達成状況は「順調」 文科省委が評価 (2010年11月6日 日本経済新聞)
文部科学省の国立大学法人評価委員会は6日までに、国立大と共同利用機関の計90法人が策定した2009年度分の中期目標・中期計画に対する達成状況について、「基本的に順調に進んでいる」との評価結果を公表した。
09年度は第1期の中期目標期間の最終年度に当たる。評価委は(1)業務運営の改善と効率化(2)財務内容の改善(3)自己点検・評価と情報提供(4)その他業務運営――の4項目を「特筆すべき進ちょく状況」「順調」「おおむね順調」「やや遅れている」「重大な改善事項がある」の5段階で評価した。
4項目とも「重大な改善事項がある」とされた法人はなく、いずれの項目も96~100%の法人が「おおむね順調」以上だった。いずれかの項目で「やや遅れている」と評価されたのは7法人で、08年度より5法人減った。
大学院の専門職学位課程で定員充足率が90%未満だったのは、08年度から5法人増え10法人。内訳は、教職大学院が北海道教育大など6法人、法科大学院が信州大など4法人だった。