政府は04年に国立大を独立行政法人化した。以来、人件費の財源となる運営費交付金を削減する一方、大学に外部の「競争的資金」の獲得を求めてきた。
さらに研究費の「選択と集中」を進め、国が重視する研究開発分野に予算を重点配分している。
こうした競争原理の導入で、研究者は予算獲得のため申請手続きなどに追われ、研究時間は削られた。短期間で成果が出る研究を優先せざるを得なくなっている。
時間を要する基礎研究などを進めるのは難しい。特定分野に予算を集中させれば、研究の裾野が広がらなくなることも懸念される。
そもそも科学の目的や喜びは、未知の分野を開拓し真理を探究することにある。
研究者間の切磋琢磨(せっさたくま)は必要だが、すぐに役立つ成果ばかり求められては人は育たず、研究職を志す若者からも敬遠されかねない。
政府が科学技術立国を標榜(ひょうぼう)するのなら、中長期的な視野に立ち、多様な研究環境の構築に力を注ぐことが求められる。