2023年8月15日火曜日

記事紹介|憂慮すべきこと

独ドイチェ・ヴェレはこのほど、「外国のライバルとの戦いに敗れた日本の大学」とする記事を掲載した。

記事はまず「人口の減少、外国人留学生の減少、政府支援の減少、教授らの海外での活躍機会の増加が、日本の高等教育に深刻な課題をもたらしている」「日本の大学は世界トップの学術機関のランキングで後退し、多くの面で中国、韓国、シンガポールのライバルに追い抜かれている」とした。

記事は「2022年時点で日本には大学、短大、専門学校が計780校あり、293万人の学生が在籍している。学生総数は過去10年間ほとんど変わっていないが、近い将来減少し始める可能性がある。1992年には205万人の18歳がいたが、22年にはわずか112万人だ」とした。

さらに「潜在的な学生の減少と同じくらい心配なのが、世界舞台での日本の大学の評判だ」と指摘。英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションが発表した最新の世界大学ランキングで、上位100位に日本の大学は2校しか含まれていないこと、東京大学は順位を4つ下げて39位、京都大学は順位を7つ下げて68位だったことを取り上げ、「このランキングは政府にとって大きな失望となったに違いない。文科省は10年前、今後10年間にトップ100に少なくとも10校の大学を入れるという目標を設定していた」とした。

記事はその上で、日本で20年近く高等教育に従事している国士舘大学のジンベルグ・ヤコフ氏のコメントを紹介した。

同氏によると、こうしたランキングでの日本の大学の減少は、文科省が約30年前に実施した国立大学の独立行政法人化改革に根ざしており、事実上、大学は財政的に自力でやりくりしなければならなくなったことを意味している。

日本の教授らは、財政的にも資源的にも政府の支援が枯渇するにつれ、研究や学術論文の執筆ではなく、スポンサーを探して走り回ることに多くの時間を費やすようになった。

日本の多くの大学は、21世紀初頭から積極的に外国人留学生、特に中国の学生の受け入れるようになった。しかし日本の大学が世界ランキングを落とす一方、中国の大学のランキングが上昇しているため、中国の学生が日本に来る可能性は低くなっている。

記事はまた、北海道医療大学の塚本容子教授のコメントも紹介した。

同氏によると、学位課程を始める日本人学生の能力が低下している。今は子どもの数が減っているので、数年前に比べて大学に入学する競争も減っている。同氏の経験では、高校生のように学生を手取り足取り教えるのに多くの時間を費やす教授がたくさんいる。学生らは未熟であることが多く、教授らは学生らを助けるために疲れ果てているという。

同氏が近年気づいたもう一つの傾向は、海外留学への意欲が全体的に欠如していることだ。「学生らは自分の視野を広げることに興味がない。その理由の一つは、それが彼らにとって難しすぎるから」だという。

研究への資金不足も、他国で受けられる金銭的インセンティブとは顕著に対照的で、同氏によると「もしあなたが優れた教授で、優れた研究をしたいのなら、なぜ日本に留まるのか。世界の他の地域には、そうした人々にとってチャンスがたくさんある」。

同氏によると、日本では労働力不足が深刻化しているため、学生らは成績をあまり気にする必要がなく、卒業後すぐに就職が保証される。学者らは研究を進めるための時間と資源が少なくなり、他の場所でより良い機会を探している。学力水準の低下はすぐに国の労働力の低下に反映されることになるため、本当に憂慮すべきことだ。

出典:外国のライバルとの戦いに敗れた日本の大学―独メディア|ライブドアニュース