仕事への情熱がパフォーマンスの原動力となっている従業員を求め、そのモチベーションを奨励し、育てる戦略に投資する企業が増えている。
しかし、情熱を育むことを追求する中で、雇用主は経済的安定、社会的地位、家族への義務など、ほかの動機を持つ従業員のニーズを見落とし、軽視している可能性があることが、筆者らの最近の調査で明らかになった。こうした従業員は会社の成功に重要な役割を果たしているが、仕事に対する情熱がないと思われているために、目に見えないペナルティを課せられている可能性がある。
情熱に価値を置く組織は、一部の従業員にとって疎外感を生む可能性があることを、マネジャーは認識する必要がある。根底にある動機にかかわらず、従業員それぞれの貢献を認め、称えることは、彼らの帰属意識と目的意識を高め、ひいてはエンゲージメントと生産性を向上させる。
もしあなたが仕事を愛する従業員なら、そのせいで同僚に対して批判的になり、彼らへの支援の仕方に影響が及ぶ可能性があることを、心に留めておかなければならない。すべての人にとって、情熱があることが仕事をする理由である必要はない。家族の世話をしたり、セーフティネットとして福利厚生が必要だったり、仕事に対する真の情熱をまだ見出せていなかったりする従業員もいるかもしれない。
組織は、多様な動機を持つ従業員に対して福利厚生や特典が魅力的かどうかを検討すべきだ。仕事への情熱から仕事に魅力を感じる従業員もいれば、柔軟な勤務形態や能力開発の機会へのアクセスが動機となる従業員もいるだろう。さまざまな福利厚生や特典を提供することで、リーダーは多様な動機を持つ従業員に魅力的な職場をつくり、優秀な人材を維持することができる。
成功には情熱が欠かせないという考え方が一般的だが、すべての従業員は、働く動機にかかわらず、その個性と貢献度を評価されなければならない。リーダーは、従業員の多様な動機を認識し、情熱中心の枠にはまらない従業員を不当に扱うのではなく、あらゆる動機を支援し、評価する包摂的な環境をつくるべきだ。
出典:仕事を愛しすぎる人が組織に与える悪影響 働く動機にかかわらず個性と貢献度を評価せよ|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー