官僚が好む言葉に「お尋ねの趣旨が必ずしも明らかでない」がある。要するに「質問に答えません」の意味だ。普通に考えれば理解できる質問に、回答を避ける方便と感じることもある
▼前衆院議員の仲里利信さん(82)は在職中、内閣に質問主意書を132回も出した。答弁書に、たびたび「お尋ねの-」の記載があった。たまりかねて「この言い回しを多用し、答弁を留保する背景は」と聞いた
▼回答は「誠実に答弁してきた」「引き続き適切に対応したい」。仲里さんは「典型的なはぐらかし。明確に答えて後々、問題になるのが怖いのだろう」と苦笑する
▼毎日新聞が2017年に報じた集計によると、00年以降の答弁書約1万2500件のうち、同様の表現は約1300件。12年の第2次安倍内閣以降が6割超を占めた。官僚の忖度(そんたく)が強まった時期と重なる気がする
▼最近、新たな霞が関用語に気付いた。マルチ商法企業へ、立ち入りを検討した消費者庁が「本件の特異性」を理由に見送った、との文書がある。会長は「桜を見る会」の招待客だった
▼森友学園問題で、財務省が文書に「本件の特殊性」と書いたのを思い出す。学園の理事長は首相夫妻との近さを誇示していた。独特の用語を隠れみのに、行政を恣意(しい)的に運用していないか。堂々と「首相が困る案件」と書いてはいかが。
(出典)官僚が好む言葉|沖縄タイムス