「思考力を鍛える授業づくりには手間がかかる。教員の多忙化で、研修や教材研究の時間がとれなくなっていないか。大学の教員養成課程で新しい教え方を習得させているか。しっかり検証して環境整備に努める」(朝日新聞社説)ことが求められています。(以下引用抜粋)
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- 読解力に課題があるのは、日本の教育システムそのものが、読解力が育ちにくいものになっているからだという指摘があります。日本の学校では、教科書を使って機械的に回答を導き出す方法を教えていくというのが一般的です。逆に言うと、教え方が正解を導く形から抜け切れていないというわけです。一方、読解力というのは、一つの文章を読んでもAという見方もあればBという見方もあるといった様々な考え方を許容することから身につくものとされています。たとえば今回の読解力の問題のうち、自由記述式の問題で、「自分の考えを他の人に伝わるような記述ができない」、「問題文から語句を引用するだけで、説明が不十分」といった理由で正答にならない例が多く見られたということです。
- 「必要な情報がどのサイトに記載されているか推測し探し出す」という問題や「情報の質と信憑性を評価して自分ならどう対処するか、根拠を示して説明する」という問題の正答率が、OECD加盟国平均と比べて低かったのです。ネット時代と言われて久しいわけですが、そうした中では日々、我々は必然的に多くの情報と接するため、必要な情報を探し出し、情報の信憑性を判断する能力を育むことが生きていく上でも不可欠です。今回の結果は、奇しくもそうした力が十分育まれているとは言えないことが示されたことになったわけです。
- 学校外で平日、どのように利用しているかを見てみると、日本の生徒は、毎日またはほぼ毎日「ネット上でチャットをする」が87.4%、「1人用ゲームで遊ぶ」が47.7%で、いずれもOECDの平均より20ポイント高くなっています。特に、ネット上でのチャットは、6年前に比べて60.5ポイント増えていて、SNSの普及に伴って若年層に急激に利用が広がってきたことがうかがえます。
- 一方で、「コンピュータを使って宿題をする」「学校の勉強のためにインターネットのサイトを見る」といった勉強にデジタル機器を利用するという生徒は3%から6%程度でほとんど活用していないことがわかりました。OECD平均は20%程度です。これはそもそも学校の授業でデジタル機器をあまり活用していないことが要因と見られていて、同じ調査の中で、80%の生徒が学校の授業ではデジタル機器を利用しないと回答しています。
- 「読解力」の育成には時間をかけた取り組みが必要です。学校の働き方改革が待ったなしの状況の中で、現場の負担を増やすことなく課題を克服するにはどうするのか、今回の調査結果は、学校の持続に関わる大きな課題を突きつけています。
(出典)「国際学力調査 気になる読解力は」|NHK 解説委員室
(資料)OECD生徒の学習到達度調査(PISA)の調査結果|文部科学省