そういう時代に備えるためにも、まず自分の心の中から、国境を消してみることだ。
日本は長い間、海と言語という2つの障壁によって、世界から孤立していた。
世界の荒波から守られていたといってもいいかもしれない。
その揺りかごのような世界で、独自の文明と文化を発展させてきたことは誇っていいことだろう。
けれどそれと引き換えに、世界とかかわる技術を成熟させることができなかった。
21世紀の現代になっても、その“後遺症”から脱却していない。
多くの日本人にとって“世界”はまだ、こちらから出かけていくひとつの異世界でしかない。
日本とは別に、世界という場所があるかのように感じている。
だから、どこへ行っても、自分たちは“お客さん”であるかのように感じる。
日本も世界の一部であり、それはつながっているひとつのものだという認識が持てないのだ。
いや、概念としてはそれがわかっているのだろうけれど、皮膚感覚としてそれを実感してはいない。
だから、外国のニュースは多くの日本人にとってどこか他人事なのだ。
中東で問題が起きれば、それがダイレクトに日本に影響するのは明らかなのに、そのことを当事者として考えようとはしない。
あくまで感覚的な話だけれど、欧米の人たちは外国で起きていることを、日本人が国内の他の地方で起きていることに感じるのと同じくらいの切実さをもって感じているというのに、である。
ビジネスの場合でも、欧米人はごく自然に外国を視野に入れるけれど、これだけ日本の経済や産業が外国と深く結びついているにもかかわらず、日本人はいまだに“世界進出”などといっている。
そういう感覚を、意識して変えようということだ。
世界はひとつだと、口でいうのは簡単だ。
けれど、心からそう感じるのは、多くの平均的な日本人にとってはまだ難しい。
その感覚を変えなければ、インターネットによって国境という概念が失われていく時代に適応することはできない。
世界から日本に流入してくる人や資本や情報の波に翻弄(ほんろう)されて、それこそ日本という国の進むべき方向を見失ってしまうだろう。
◇
『好奇心と向上心は、走り続けるためのエネルギーだ。
走るのが辛くなるのは、好奇心と向上心を失いかけているからなのだ。
社会人になっても勉強が必要なのは、好奇心を枯れさせないためでもある。
世界は驚きに満ちている。
その驚きに触れる努力を怠りさえしなければ、いつも心に好奇心を湧かせてくれる。
好奇心があれば、人は前進し続けることができるのだ。』
ニューヨーク市の人口は850万人で全米最大の都市だ。
そして、全人口のうち、白人が33%、ヒスパニック28%、黒人25%、アジア系12%という比率になっている。
また、そのうちの37%にあたる300万人以上が外国生まれの移民で、市内では170近くの言語が話されている。
英語が話せない人は、18%もいるそうだ。
「世界は驚きに満ちている」
いくつになっても好奇心を忘れず、新たなチャレンジを重ねたい。
(出典)国境という概念が失われていく時代|人の心に灯をともす