2010年代は毎年のように日本人研究者がノーベル賞を受賞してきた。
一見、日本の科学技術力の高さが際立つ10年間だったように感じるかもしれないが、ノーベル賞を受賞した研究者たちが基礎研究に対する投資の少なさや、若手研究者のポスト不足、博士課程へと進学する学生の減少を憂う発言をこぞってするなど、日本の科学技術力の先行きの危うさが垣間見えた10年間でもあった。
一連の課題は、全てつながっている。中でも、博士課程への進学者数の減少は、研究人材の減少、ひいては研究力の低下に直結した問題だ。
「博士は一つのことしかできず、頭がカタイ」と企業から敬遠されがちだ。だからこそ、博士課程で民間企業への就職を選択肢にしている学生には、自身の専門知識を直接活かせる分野が限られる現実を理解した上で、自身が培った能力を編集・加工して産業の中で活かす方法を考えることが求められる。
企業側にも改善の余地はある。マッチングがうまくいっていない原因は、企業自体がどんな人材を欲しているのかを明確に言語化できていないことにあるともいえる。“博士的”な能力を欲していながら、そういった人材がうまく活躍できる場を用意できていないのだ。
この課題を乗り越えることができれば、博士課程の将来に対する不安も少しは緩和されるはず。日本の科学技術を支える博士人材も、もっと増えていくのではないだろうか。
(出典)華々しいノーベル賞の陰で減少する日本の研究者、博士課程への進学阻む「キャリア不安」のカベとは? |BUSINESS INSIDER JAPAN