2019年12月10日火曜日

記事紹介|イノベーションはなぜ必要か、どうすればイノベーションは起きるのか。

出口治明さん(立命館アジア太平洋大学(APU)学長)の指摘です(インタビュー記事から抜粋引用)。


  • ユニコーンや、グーグルやアップルなどのいわゆる『GAFA』の創業者の国籍は多様で、多くは複数の分野の博士号を持っています。高学歴で個性のとがった人たちが、わいわい議論する中でアイデアが出てくるのです。でも日本は大学院だけでなく、大学の進学率も54%と低い。OECD全体の平均を7ポイントも下回ります。しかも、大学で勉強しない。これは企業が100%悪い。企業の採用基準に『成績』がないのですから。さらに、なまじ勉強したやつは使いにくいとかアホなことを言って、大学院生を採用しません。
  • よくいわれる、日本の社員は企業への忠誠心が強いというのはうそです。世界的な調査会社によると、自分の帰属している組織を信じる割合が一番低いのが、日本です。昔、海外から来た客を東京の飲み屋に連れて行ったとき、周囲の客がみな上司や会社の悪口を言っていることを知り、仰天していました。なんで会社ではなく、公の場所で言っているんだと。
  • 会社の中では同調圧力が強いので、会議中も上司が言うことに下を向いてだまっている。面従腹背の天才にはなるけれど、内心にフラストレーションがたまるのです。そう理解すれば、自分の組織を信じる割合が一番低いというデータときれいに符合します。
  • 終身雇用というのは、高度成長と人口の増加がなければ成り立たないシステムなんですよ。なのに日本では、クビを切るのは良くないという幻想が社会を支配している。僕は『左遷』された経験がありますが、旬な時期に仕事がないことほどつらいことはない。クビを切ることこそが思いやりなんです。うちではいらないが、もう1回広い世界でチャレンジしてごらんと。米国では起業するとき、2、3回失敗した人にお金が集まります。『次は頑張るだろう』と。日本にはそういう意識がありません。
  • 「急成長したパタゴニアという企業は、『買わないでください』と宣言してマーケティングしています。モノを作ること自体が環境に負荷をかけるから、リユースしてくださいといって売り上げを伸ばしているのです。アイデアを上手に使って、環境を破壊しないように成長することは可能で、持続可能性を保つ成長だけが残る。長く続いた文明はすべてそうです。そのためにも私たち人類は、必死で頭を使わないといけません。アイデア以外に、イノベーションを生む付加価値の源泉はないのです。


(出典)(インタビュー)イノベーション立国論 立命館アジア太平洋大学学長・出口治明さん:朝日新聞デジタル