最低賃金2026:知っておきたい基本・現状・これから

最低賃金記事

ニュースや職場の話題でよく耳にする「最低賃金」。言葉は知っていても、仕組みや背景まで詳しく知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。この記事では、基本的な意味から最新の数字、今後の見通しまでをわかりやすく整理します。

そもそも最低賃金とは何ですか?

最低賃金とは、会社や店(雇う側)が働く人に支払わなければならない賃金の下限額を、法律(最低賃金法)で定めたものです。時給で設定されており、パート・アルバイト・試用期間中の人にも例外なく適用されます。これを下回る賃金で働かせた場合、雇い主は50万円以下の罰金を科される可能性があります。

日本には2種類の最低賃金があります。

  • 地域別最低賃金——都道府県ごとに設定。すべての働く人に適用されます
  • 特定最低賃金——特定の産業・職種ごとに設定。地域別より高い場合はこちらが優先されます

最新の数字:2025年度はどうなっている?

2025年度の全国加重平均は時給1,121円です。前年度(1,055円)から66円引き上げられ、国が都道府県ごとに引き上げ額の目安を示す「目安制度」が1978年度に始まって以来、過去最大の引き上げ幅となりました。

この改定で、全47都道府県が初めて時給1,000円を超えました。これは日本の最低賃金制度史上、はじめての出来事です。

一方で、都道府県によって金額はまだ大きく異なります。

順位都道府県最低賃金(2025年度)
1位東京都1,226円
2位神奈川県1,225円
3位大阪府1,177円
最下位高知・宮崎・沖縄1,023円

最高と最低の差は203円。地方ほど引き上げ幅が大きく格差縮小は進んでいますが、まだ解消には至っていません。


最低賃金はどうやって決まるの?

毎年、次のような流れで改定されています。

  1. 7〜8月:厚生労働省の「中央最低賃金審議会」が都道府県をA〜Cランクに分類し、引き上げ目安額を提示します
  2. 8〜9月:各都道府県の「地方最低賃金審議会」が地域の実情をふまえて最終的な金額を決定します
  3. 10月〜翌年3月:順次、各都道府県で新しい最低賃金が発効します

2025年度はCランク(地方の県)の目安をAランク(都市圏)より1円高く設定するなど、地域間格差の是正が意識された改定となっています。

そしてまさに今、2026年度の議論がスタートしたばかりです。NHKの報道(2026年6月26日)によると、厚生労働省の上野大臣は審議会の冒頭で、春闘の賃上げの流れを「地方や中小企業、非正規雇用の人たちにも波及させるには最低賃金による底上げが必要だ」と述べ、地域間格差の是正にも配慮した議論を呼びかけました。審議会は早ければ来月にも都道府県ごとの目安を示す見通しです。

最低賃金をめぐる3つの課題

1. 中小企業・小規模事業者への負担

日本商工会議所の調査(2026年3月)によると、2025年の引き上げを受けて、最低賃金を下回る従業員の賃金を引き上げた中小企業は45.1%にのぼります。また、「現在の最低賃金水準に負担を感じている」と答えた企業は76.6%と、約4社に3社が重荷を感じている実態があります。

現場の声も深刻です。神奈川県でクリーニング店23店舗を展開する会社では、パート従業員110人の時給を毎年最低賃金に合わせて引き上げてきた結果、人件費が売り上げのおよそ半分を占めるまでになりました。同社の営業本部長は「会社としてやれることはやって賃上げ分を賄ってきたが、もう限界を迎えている」と語っており(NHKニュース、2026年6月26日)、中小企業の苦しい実態を象徴しています。

特に問題なのは、大企業との取引で価格を自由に決められない中小企業の場合、人件費が増えても取引先に価格転嫁しにくく、利益が直撃されやすいという点です。

2. 都市と地方の格差

最低賃金を下回る従業員がいたために賃上げが必要になった割合は、都市部の37%に対して地方は46.6%と、約10ポイント高くなっています。地方の事業者ほど引き上げの影響を大きく受けており、地域によって事情が大きく異なります。

3. 都道府県によって発効日がバラバラ

2025年度は最も早い都道府県(10月1日)から最も遅い都道府県(2026年3月31日)まで、最大約6か月の開きがありました。同じ法改定なのに半年近くずれるのは制度として問題があるという指摘があり、全国統一化を求める声も出ています。


これからどうなる?

政府の目標:2020年代中に全国平均1,500円

現政権は、2020年代中に全国加重平均で時給1,500円を達成する目標を掲げています。ただし、そのためには年平均7.6%程度の引き上げが必要で、過去最大だった2025年度の6.3%でも届きませんでした。目標達成には高いハードルが続きます。

一方、「絶対額ではなく、賃金の中央値に対する相対的な目標(ヨーロッパの方式)を参考にすべき」という提言も出ており、目標の設定方法自体を見直す議論も始まっています。

2026年度の見通し

物価高が続く中、働く人の側からは引き上げを求める圧力が強い一方、中小企業側は慎重にならざるを得ない状況です。2026年度の審議では全国平均1,150円台突破が視野に入るとみられていますが、中東情勢のコスト高なども重なり、議論が難航する可能性もあります。

1,500円が実現すると、生活はどう変わる?

最低賃金の引き上げを切実に待ち望んでいる人もいます。都内でひとり暮らしをしながら交通誘導員として働く70代の男性は、時給1,200円台で働きながら月8万円の年金と合わせて生計を立てています。最近は家賃も6,000円値上がりし、「いまは節約をして食べて生きていくだけで精いっぱい」と語ります(NHKニュース、2026年6月26日)。

仮に最低賃金が1,500円になった場合、フルタイム(月160時間勤務)で働く人の月給は最低でも24万円になります。こうした非正規雇用の方々にとって、最低賃金の引き上げは生活の安定に直結する問題です。


まとめ

観点内容
直近の水準全国平均1,121円(2025年度・過去最高)
政府の目標2020年代中に1,500円
主な課題中小企業の負担、都市と地方の格差、価格転嫁の難しさ
今後の方向性引き上げ基調は続くが、ペースの維持は難しい局面

最低賃金の議論の核心は、「賃金を上げたい→でも中小企業には余力がない→だから価格転嫁と生産性向上が必要」というジレンマにあります。働く側・雇う側・社会全体がどうバランスをとるか——最低賃金は、私たちの暮らしと経済の両方に直結するテーマです。

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