AI時代の個人情報改正、何が変わる?
現在、国会で審議されている「個人情報保護法」の改正案について、市民の視点からポイントをまとめました。
今回の改正の「狙い」とは?
今回の法改正には、大きく分けて2つの目的があります。
1.データの利活用を進め、AIや経済成長につなげる
生成AIの普及や自動運転、医療研究などの分野では、大量のデータ活用が不可欠です。一方で、個人情報保護のルールとのバランスをどう取るかが課題となっています。
今回の改正案では、一定の条件の下で、統計作成など公益性のある目的や社会的なデータ活用を進めやすくする制度整備が盛り込まれています。これにより、AI開発や研究開発などの分野で、安全性を確保しながらデータを活用しやすくすることが目指されています。
2.新しい時代のプライバシー保護を強化する
一方で、顔認証技術やAIによる個人分析の普及、不正な個人情報売買など、新たなプライバシーリスクも増えています。
そのため、今回の改正案では、生体情報の保護強化や個人の権利拡充、悪質な事業者への制裁強化も重要な柱となっています。
つまり政府は、「データを安全に活用すること」と「個人の権利・プライバシーを守ること」のバランスを見直そうとしているのです。
改正案の主なポイント
① AI時代を見据えたデータ活用ルールの見直し
これまで個人情報の第三者提供などには本人同意が原則とされてきました。
今回の改正案では、一定の統計作成など公益性のある目的について、厳格な条件や安全管理措置を前提に、本人同意を不要とする制度の見直しが盛り込まれています。
もっとも、あらゆるAI学習や企業活動で自由に個人情報を利用できるようになるわけではありません。利用目的や安全管理、第三者提供に関するルールなど、法律上の要件を満たすことが前提となります。
② 生体情報などに関する個人の権利を強化
顔認証で利用される顔特徴データなど、生体情報の重要性が高まる中、透明性の確保や本人保護を強化する制度整備が進められています。
改正案では、生体情報などについて、実際の被害が発生していない場合でも、一定の条件の下で本人が利用停止や削除などを求めやすくする権利の拡充が盛り込まれています。
③ 違法な個人情報ビジネスへの課徴金制度
個人情報を違法に取得・提供して利益を得る悪質な事業者への対策として、新たに課徴金制度の導入が盛り込まれています。
これまでは刑事罰が中心でしたが、行政上の経済的な制裁を加えることで、不正なデータビジネスへの抑止力強化が期待されています。
国会などで議論されている主な論点
論点① データ活用とプライバシー保護のバランス
AIや統計利用を促進する一方で、「匿名化・統計化されたデータでも将来的に個人が再識別されるリスクがあるのではないか」という懸念が専門家などから指摘されています。
また、制度の運用次第では企業側の裁量が広がりすぎる可能性を心配する声もあります。
論点② 情報漏えい時の本人通知の在り方
今回の改正案には、「本人の権利を害するおそれが極めて低い場合」は、情報が漏えいしても本人への通知を免除できる規定が含まれています。
企業側の負担軽減を図る一方で、「免除の判断基準が曖昧で、企業側の裁量で通知が省略される恐れがある」「漏えいを知る機会が失われ、自身の被害確認が遅れるのではないか」といった批判もあります。
論点③ 生体情報の利用は十分にコントロールできるのか
顔認証などの技術は利便性が高い一方、本人が知らないうちに利用されることへの不安もあります。
制度上の透明性確保や利用停止請求権の実効性が、今後の運用上の重要な課題となります。
論点④ 子どもの個人情報保護
未成年者の個人情報保護についても、保護者の関与の在り方や子どもの権利保護をどのように制度へ反映させるかが議論されています。
特に、家庭内で保護者と子どもの利益が一致しないケース(家庭内虐待など)への対応については、今後も検討が必要との指摘があります。
今後の見通し
法案は2026年5月26日に衆議院を通過し、現在は参議院で審議が進められています。今国会での成立が見込まれています。
成立した場合、施行は2028年春ごろになる見通しです。「どのような場合に本人同意が不要となるのか」「どのような安全管理措置が必要になるのか」といった実務上の詳細は、成立後に政令やガイドラインで順次示される予定です。
私たち市民が考えておきたいこと
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■ 利用目的を確認する習慣を持つ
新しいアプリやサービスを利用する際は、「どのようなデータを取得するのか」「第三者提供はあるのか」「AI開発などに利用される可能性はあるのか」を意識して確認することが大切です。 -
■ 自分の権利を知っておく
法律では、自分の個人情報について開示・訂正・利用停止などを求められる制度があります。今後、生体情報などについて権利が拡充される場合には、制度を知った上で自ら行使できるよう準備しておくことが重要です。 -
■ 利便性とプライバシーのバランスを社会全体で考える
医療の発展やAI技術の進歩にはデータ活用が重要です。その一方で、「どこまでなら社会のためにデータ活用を認めるのか」「どのような情報は厳格に守るべきなのか」という線引きは、社会全体で継続的に議論していく必要があります。
個人情報保護法の改正は、単なる法律改正ではなく、
AI時代における私たちの権利と社会のあり方を考える重要なテーマと言えるでしょう。

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