【令和9年度概算要求シリーズ⑤・最終回】中小企業にも関係する脱炭素・GX支援。令和9年度の注目施策を整理

「令和9年度(2027年度)概算要求」では、環境省を中心にGX(グリーントランスフォーメーション)関連の施策が幅広く要求されています。「脱炭素=大企業の話」と思われがちですが、建設業・運送業・製造業など、中小企業にも関わりの深いメニューが多く含まれています。シリーズ最終回として、GX投資がなぜ中小企業にも関係してくるのか、基本から解説します。

(このシリーズの第1回「令和9年度の中小企業向け補助金、何が変わる?」もあわせてご覧ください。)

そもそも「GX」「脱炭素」とは何を目指しているのか

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、化石燃料に依存した産業・社会構造を、太陽光や風力などのクリーンエネルギー中心の構造に転換していく取り組みを指します。日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目標に掲げており、そのための投資を後押しする施策が年々拡充されています。

「なぜ中小企業まで対応が必要なのか」と感じる方もいるかもしれませんが、大企業が自社の排出量だけでなく、取引先(仕入れ先や外注先)を含めたサプライチェーン全体の排出量(後述する「Scope3」)の削減を求められるようになっており、その影響が中小企業にも及び始めているためです。

業種別・GX関連施策の概算要求額

施策 対象イメージ 令和9年度概算要求額 前年度
住宅・建築物の脱炭素化支援 建築主・建設業者等 1,787億円 187億円
商用車・物流の脱炭素化 運送・物流・船舶事業者 627億円 195億円
Scope3を含む省CO2設備投資支援 企業・サプライチェーン 275億円 161億円
中小企業を含むバリューチェーン脱炭素経営支援 中小企業を含む事業者 114億円 73億円
脱炭素先行地域等の実現支援 自治体・地域事業者 730億円 200億円
再生資源供給サプライチェーン強靱化 リサイクル・製造事業者等 488億円 379億円

いずれも前年度から増額が要求されており、GX関連の予算は概算要求全体の中でも重点分野として位置づけられていることがうかがえます。金額は関連施策を含む場合があるため、そのまま特定の補助金の総額を意味するものではない点にご留意ください。

業種別に見る、関係が深そうな施策

  • 建設業:住宅・建築物の脱炭素化支援は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス。断熱性能を高め、太陽光発電等で年間の消費エネルギー収支をゼロに近づける住宅)やZEB(同様の考え方のビル)、建物が建てられてから解体されるまでの生涯排出量(ライフサイクルカーボン)の算定・削減を促進する施策です。省エネ性能の高い住宅・建築物への建て替え・改修需要と関わってきます。
  • 運送業:商用車・物流の脱炭素化は、商用車の電動化や物流・船舶のGX投資を対象とした施策です。車両更新のタイミングで活用を検討する価値があります。
  • 製造業・サプライチェーン全体:「Scope(スコープ)」とは、企業の温室効果ガス排出量を算定する際の区分で、Scope1は自社の直接排出、Scope2は購入した電気などによる間接排出、Scope3は仕入れ先・外注先を含めたサプライチェーン全体の排出を指します。取引先の大企業からScope3の算定・削減を求められる中小企業が増えており、こうした企業にとって設備更新の後押しになる可能性があります。
  • リサイクル・製造業:再生資源供給サプライチェーン強靱化は、金属・太陽光パネル・蓄電池等の再資源化設備投資を支援する施策です。産業廃棄物処理・リサイクル関連の許可を持つ事業者にとって関連性の高い分野です。

「脱炭素経営支援」という入口も用意されている

いきなり大きな設備投資を検討するのが難しい場合は、「中小企業を含むバリューチェーン脱炭素経営支援」のような、排出量算定や削減計画の策定を支援する施策から着手するという選択肢もあります。取引先からの排出量算定要請に対応する第一歩として、こうした計画策定支援の活用を検討してみるのもよいでしょう。

中小企業が今からできる3つの準備

  1. 自社の設備の省エネ性能を棚卸しする 建物・車両・生産設備のうち、更新時期が近いものがあれば、GX関連の補助メニューと組み合わせられないか検討しておきましょう。

  2. 取引先からの排出量算定要請の有無を確認する Scope3対応を求められている、または今後求められそうな場合は、脱炭素経営支援策の活用を視野に入れておくとよいでしょう。

  3. 関連する許認可の状況を整理する リサイクル・産業廃棄物関連の設備投資を検討する場合は、産業廃棄物処理業(収集運搬・処分)の許可や施設に関する許可・届出等の状況もあわせて確認しておくと、補助金活用と許認可対応を一体的に進められます。

まとめ:シリーズ全体を振り返って

令和9年度概算要求では、GX関連の予算が建設・運送・製造・リサイクルなど幅広い業種にわたって拡充要求されています。金額の大きさが目立つ分野ですが、あくまで概算要求段階であり、対象者・補助率・補助上限などの詳細は今後の制度設計や公募要領で確定します。

本シリーズでは、①制度全体の変化、②建設業、③物流・倉庫業、④外国人材受け入れ、⑤GX・脱炭素投資という5つの切り口で、令和9年度概算要求のポイントを整理してきました。いずれの分野にも共通するのは、「今の情報はまだ概算要求段階であり、確定するまでには時間がかかる」ということと、「制度が固まってから動き出すのではなく、今のうちから情報収集と準備を進めておくことが有利に働く」ということです。自社の事業や、日々の暮らしに関わりの深いテーマから、ぜひ継続的に情報をチェックしてみてください。

本記事は、環境省「令和9年度環境省重点施策」(2026年8月公表)等の公表資料をもとに作成しています。制度の詳細は今後変更される可能性があるため、実際の活用にあたっては必ず公募要領等の一次情報をご確認ください。

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