日本人1.2億人割れ。問題は「人が減ること」より「必要な人がいないこと」ではないか

日本人の人口が、42年ぶりに1億2,000万人を下回りました。

総務省が2026年7月に公表した「住民基本台帳に基づく人口」によると、2026年1月1日時点の日本人住民は1億1,973万6,483人で、前年から91万6,744人減少しました。特に、出生数から死亡数を差し引いた「自然減少」は92万3,008人に達し、調査開始以来最大となっています。

一方で、日本に住む外国人は403万1,159人となり、初めて400万人を超えました。前年から35万3,696人、9.62%増加しています。

この二つの数字を見ると、「日本人が減った分を、外国人が埋めている」というふうに考えたくなります。ニュースへの反応を見ても、「ついにここまで減ったか」という不安の声と、「外国人がこれだけ増えているなら大丈夫だろう」という受け止め方に分かれがちです。

しかし、どちらの見方も、この問題の半分しか見ていないのではないでしょうか。

本当に考えなければならないのは、「日本人が何人いるのか」だけではありません。「必要な仕事をする人が、必要な場所にいるのか」という問題です。これからの日本では、人口が減ることそのもの以上に、人の数と仕事のミスマッチが大きな問題になる可能性があります。

「働く人の数」と「必要な仕事の量」は、別々に動いています

まず知っておいていただきたいのは、「外国人が400万人いる」ことと「働く外国人が400万人いる」ことは、イコールではないということです。この400万人という数字には、留学生やその家族、日本で生まれ育った子どもなども含まれています。

実際に働いている外国人の数を示すのは、別の統計です。厚生労働省が2026年1月に発表した調査によると、2025年10月末の時点で、日本で働く外国人は257万1,037人でした。届出が義務化された2007年以降で過去最多です。増加率は11.7%で、外国人労働者の増加が続いています。

外国人労働者の出身国も、多様化しています。ベトナムが最多である一方、インドネシア、ミャンマー、ネパールなどからの労働者も増えています。同時に、韓国や台湾も同じように少子高齢化に悩んでおり、人材の獲得は、これから国どうしの競争になっていきます。「日本で働きたい」と思ってもらえる国であり続けられるかどうかも、これからは考えなければならない問題です。

このように、日本人の働き手が減る一方で、外国人の働き手は着実に増え続けています。ただ、この二つの数字を単純に足し算・引き算しても、日本の人手不足の全体像は見えてきません。

というのも、日本の労働市場が抱えている問題は、単に「人数が足りない」ことだけではなく、「必要とされる場所に、必要とされる人がいない」というズレだからです。リクルートワークス研究所が2023年に発表した労働需給シミュレーションによれば、2040年には1,100万人余りの労働供給不足が生じると予測されています。しかも、この不足はあらゆる仕事に均等に現れるわけではありません。介護・医療・建設・物流のように、高齢化が進むほどむしろ必要とされる仕事ほど、深刻な人手不足に見舞われます。

なぜ人口が減っても、必要な仕事が同じようには減らないのでしょうか。高齢化が進むと、医療や介護など、高齢者を支えるサービスへの需要が高まるからです。つまり、「支える側」の人数は減っていくのに、「支えられる側」が必要とするサービスは増え続ける、というアンバランスが、これからますます広がっていくのです。

人口が減っても、すべての仕事が同じように減るわけではありません。むしろ、高齢化によって需要が増える仕事もあります。データ入力や書類作成のような、機械に置き換えやすい仕事は減っていく一方で、人の判断や、実際に体を動かして対応する必要がある現場の仕事は、なかなか減りません。ここから生まれるのが、「事務職では人が余る一方、現場では人が足りない」というねじれです。これは、日本の人口を増やすか減らすかという話だけでは、解消できない構造的な問題です。

AIは「人を減らす道具」ではなく「仕事を仕分ける道具」

AIやロボットの役割を考えるとき、「人間の代わりをする技術」として捉えるのは、少し一面的だと思います。むしろ実態に近いのは、「人間がやらなくてもよい仕事を見分けて、減らしてくれる技術」という捉え方ではないでしょうか。

実際、経済産業省が2026年に公表した「2040年の就業構造推計」でも、この見方を裏づける結果が示されています。国内投資や産業構造の転換が十分に進めば、2040年の就業者数と必要な労働力の「総量」はおおむね釣り合うとされているのです。しかし、その中身を見ると、事務職では約437万人の余剰が生じる一方、現場人材は約260万人、AI・ロボットを使いこなす人材は約339万人、専門職でも約181万人、それぞれ不足するという大きなミスマッチが残ります。

つまり、AIやロボットの活用などによって全体の需給を近づけることができても、「余っている場所」と「足りない場所」がずれたままだと、人手不足は解消しません。「人が足りない」のではなく、「必要な人が足りない」のです。

AIによって生まれた余力を、介護や建設、物流など、人間でなければ担いにくい仕事へ振り向けるためには、教育や訓練の仕組み、給料の見直し、キャリアの作り直しといった、社会全体での後押しが必要です。たとえば介護の仕事の給料が事務の仕事より低いままでは、AIで手が空いた分の労働力が、自然と介護へ流れていくわけではありません。AIを導入すること自体よりも、「浮いた労働力を、社会全体でどこに、どういう条件で再配分するか」を考えることのほうが、実務としてはずっと難しい課題です。

さらに言えば、AIが仕事を減らすスピードと、人口が減るスピードは、必ずしも足並みがそろいません。事務の仕事の自動化は、数年という単位で急速に進む可能性がありますが、介護や建設の人手不足は、すでに今、目の前で起きています。つまり、しばらくの間は「AIによって仕事があぶれた人」と「現場で人手が足りない状況」が、同時に、居心地悪く併存する時期が続くことになります。この過渡期をどう乗り切るかが、実はいちばん難しい課題なのかもしれません。

外国人を「労働力」から「地域の住民」として見る

もう一つ、この問題を考えるうえで欠かせないのが、日本で暮らす外国人の位置づけの変化です。5年、10年と日本に住み続ける外国人は、単なる「働き手」ではなく、家を借り、税金を納め、子どもを学校に通わせる、暮らしの当事者になっていきます。

政府は、2027年4月に始まる育成就労制度について、2028年度末までの受入れ見込数(上限)を42万6,200人としています。特定技能1号の80万5,700人と合わせると、約123万人です。この約123万人はあくまで受入れの上限であり、現在の外国人在留者数に単純に上乗せされる数ではありません。育成就労から特定技能へ移行し、さらに日本に長く住み続ける人が増える可能性はありますが、それがすべての人に自動的に保証された道というわけではありません。

それでも、これほどの規模の制度が動き始めると、外国人を「一時的に人手不足を埋めてくれる存在」として扱うだけでは、社会の受け入れ体制が追いつかなくなります。そうなると必要になるのが、住宅、教育、医療、地域のコミュニティといった、暮らしを支える仕組みです。日本語を学ぶ場、子どもの就学支援、病院での多言語対応、町内会など地域レベルでの共生の工夫。こうした環境づくりは、受け入れる人数の枠を決めるよりもずっと時間がかかります。自治体によって、こうした受け入れ体制を整えるための人員や財源、ノウハウには差があります。

同時に、外国人の受け入れを増やし続けることだけに頼るのも、危ういやり方です。外国人の方々も、いずれは年を重ねていきます。人口減少という大きな変化への答えを、外国人労働者を増やし続けることだけに求め続けるのは、長い目で見て無理があります。そもそも、世界的に人材の獲得競争が激しくなるなかで、これからも日本が働く場所として選ばれ続けるという前提自体、当たり前のことではありません。

問われているのは「人口の数」ではなく「社会の設計」

結局のところ、この問題を「日本人を増やすか、外国人を増やすか」という二択で考えるのは、もう実態に合っていないと思います。本当に必要なのは、次のようないくつもの取り組みを、同時に進めていくことです。

少子化対策は、すぐに人手不足を解決するものではありません。生まれた子どもが働く世代になるまでには、20年近くかかるからです。ですからこれは、「明日の人手不足を解決する政策」ではなく、「20年後、30年後の日本の土台を支える政策」として、腰を据えて取り組むべきものです。

AIや自動化による仕事の見直しは、単に効率を上げるというより、「本当に人がやる必要のある仕事は何か」を見つめ直す作業でもあります。惰性で続けている仕事や、必要以上に手をかけている仕事を見直すことも、この中に含まれます。

労働力を社会全体で再配分する仕組みは、事務の仕事から介護のような仕事へ、あるいは決まりきった作業からデジタルの知識が必要な仕事へと、人が実際に移動できる環境を整えることです。給料や、教育・訓練の仕組み、資格制度のすべてが関わってくる、地道ですが避けて通れない課題です。

一人ひとりの生産性を高めることは、同じ人数でより多くの価値を生み出すという、いちばん基本的で、いちばん難しい課題です。人口減少の影響を実際に和らげられるのは、この部分だと言ってよいと思います。

外国人材の受け入れは、単なる人数合わせではなく、暮らしの当事者として迎え入れるための仕組みとセットで進める必要があります。

このどれか一つだけで解決する話ではありません。

もちろん、人口減少が社会保障や地域経済に大きな負担をもたらすことは間違いありません。それでも、人口の減少を「人数の問題」だけとして捉えてしまうと、本当に対応すべき問題を見失ってしまいます。人口が減ることそのものが問題なのではありません。人口が減ることに合わせて、社会の仕組みを変えられないことが問題なのです。

1億2,000万人だった日本の人口が1億人になったとしても、そのことがそのまま暮らしの貧しさにつながるわけではありません。仕事の量や、人の配置の仕方を変えられるかどうかが、その先の暮らしの水準を左右します。逆に言えば、人口が減っているのに「これまでと同じ仕事を、これまでと同じやり方で、これまでと同じ人数の感覚で」続けようとすることこそが、いちばんのリスクなのかもしれません。


参考にした一次資料

数字はいずれも発表時点のものですので、今後、確定した調査結果(令和7年国勢調査に基づく確定値など)が出た際には、数字が更新される可能性がある点にご留意ください。

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