誰が決めているのか⑥ 福岡県の第三者委2億2000万円 誰が金額を決め、誰がチェックするのか

福岡県が9月17日、2つの第三者委員会を設置しました。ひとつは「部課長会」をめぐる政治資金パーティー券購入問題、もうひとつは知事・副知事・県議会の高額な海外活動についての調査です。費用の見込みは合わせて1億1011万円。同じ17日には県議会側でも、正副議長ポストをめぐる金銭授受疑惑を調べる第三者委員会が設置され、3つ合わせて約2億2000万円の費用は公費で賄われます。

このニュースを見て、多くの人が抱く感想はおそらく「調査するだけで2億円?」という驚きでしょう。ただ、この金額を「高い」「安い」で語るだけでは、本当に大事なところを見落としてしまいます。今回は、この金額の意味と、私たちが注目すべきポイントを整理してみます。

1億円は、委員5人の謝金だけではない

まず押さえたいのは、この金額を単純に「弁護士5人の謝金」とだけ考えることはできない、という点です。

報道によると、内訳は部課長会問題が4400万円、海外活動問題が6611万円です。委員は各5人で、いずれも福岡県弁護士会所属の弁護士。契約期間は契約締結日から2027年3月31日までの約半年で、弁護士とは個別に契約を結ぶ形です。県が公表した部課長会の実施要綱には、委員が補助者として調査員(上限5名)を選任できることも定められています。県議会側も、5人の第三者委員に加えて調査担当の弁護士8人、計13人の体制が公表されています。

第三者委員会の調査では一般に、文書や契約書の精査、関係者への聞き取り、法律・会計面の検証など、多くの作業が発生します。今回もそうした調査が想定されていると考えられます。

ただし、実際に調査員5人分の費用が4400万円に含まれていると確認できたわけではありません。県が現時点で公開している資料から、1億1011万円の詳細な積算内訳までは確認できません。

それでも引っかかる点

「調査には一定の費用がかかる」ということと、「1億1011万円という具体的な金額が妥当だったか」は、まったく別の問題です。

県は、第三者委員会によって事実関係を客観的かつ公正に調査し、認定・評価を行う方針を示しています。これは第三者委員会の必要性の説明にはなっていますが、なぜ4400万円で、なぜ6611万円なのかという金額の根拠を説明するものではありません。

8月21日の会見で知事は、委員について「10人いらっしゃれば10人の方と個別の契約をしていく」と説明しています。9月17日の県の発表ページには、委員の氏名と実施要綱は掲載されているものの、10人それぞれの契約額や報酬単価、費用の詳細な積算内訳は示されていません。

「税金なのだから議員が負担を」という声

西日本新聞は、この件を報じる記事の見出しに、市民の声として「議員が負担を」という言葉を掲げています。かなり率直な感覚だと思います。

今回の調査は、県職員や県議会議員が関わる問題(パーティー券購入、海外活動、金銭授受疑惑)を検証するものです。疑惑や問題の当事者が関係する事案の調査費用を、なぜ県民全体の税金で負担するのか、という疑問は自然に出てきます。

もちろん、調査には「県政の信頼回復」という公益目的があり、公費で対応する理屈は成り立ちます。そのうえで、たとえば調査によって重大な違法・不当行為が認定された場合、調査費用を最終的に誰が負担するのか、というルールをあらかじめ制度として考えておく余地はないのでしょうか。事後に個別に議論するのではなく、設置の時点で決めておくべき論点だと思います。

第三者委員会には「強制力がない」という限界も

西日本新聞は、県議会の金銭授受疑惑をめぐる調査の難しさも指摘しています。告発した吉松源昭県議と江藤秀之県議の2人は、2020年に議長・副議長に就任するまでの約1年半の間、他会派への根回しに使う宿泊ゴルフ代や、料亭での会食に伴う「お車代」などとして、計2840万円を自民党県議団幹部5人に渡したと証言しています。支払先とされているのは、8月に議長と県議を辞職した蔵内勇夫氏を含む幹部5人で、5人側は一貫して事実を否定しており、双方の主張は真っ向から対立しています。しかも第三者委員会は捜査機関ではなく、捜査機関のような強制的な調査権限を持つわけではありません。証言や物的証拠をどこまで集められるかが焦点になるとされています。

これは費用の問題とセットで考えるべき点です。捜査機関のような強制力を持たない第三者委員会が、当事者の証言が食い違う中でどこまで事実に迫れるのか。多額の費用をかけたのに、結局「言った・言わない」のまま結論が出なければ、「1億円は何だったのか」という話になってしまいます。金額の妥当性だけでなく、その金額に見合う実効性のある調査ができる体制なのか、という視点も欠かせません。

「1億1011万円」を、誰が決めたのか

ここまで、金額の根拠の説明が足りないと書いてきました。ただ、本当に知りたいのは、もう一歩先のことです。

県の発表では、9月17日の時点で弁護士との契約はすでに締結されています。県の実施要綱(部課長会)によると、委員は福岡県弁護士会が推薦した者から選ばれ、知事が委員と個別に委託契約を結ぶとされています。要綱の施行は、設置の3日前の9月14日です。契約の当事者が知事であることはわかりますが、4400万円と6611万円という数字を、契約締結までの過程で誰が、どのように算定し、承認したのかは、要綱にも書かれていません。

しかも県側の1億1011万円は、予備費で対応すると報じられています。金額だけでなく、どの予算から支出するのかを含め、どのような手続きで決めたのかも確認したいところです。

一方、県議会側は、8月17日の臨時会と9月17日の本会議で、地方自治法に基づく議員提出議案を可決する形で、委員5人と調査担当弁護士8人を確定させています。読者が知りたいのは、たとえば次のような点ではないでしょうか。

  • 4400万円と6611万円を、誰が算定したのか
  • その算定根拠を、誰がチェックしたのか
  • 10人の弁護士それぞれの報酬単価と契約額はいくらか
  • 調査補助者などの費用は含まれているのか
  • 金額は上限額なのか、予定額なのか
  • 実績が少なかった場合は減額・返還されるのか
  • 調査が長引いた場合は追加契約になるのか、その追加支出を誰が承認するのか
  • 契約相手を、どのような手続きで決めたのか
  • 県議会側の約1億円についても、同じ透明性が確保されるのか

これらが明らかになって初めて、「高いか、安いか」を判断する材料がそろいます。

まとめ:問いを分けて考える

今の段階で、2億2000万円という金額だけを見て、その妥当性を決めつけるのは早計です。調査対象が広範であれば、相応の費用がかかること自体は理解できます。大事なのは、次の問いを混同しないことだと思います。

  • ① 第三者委員会を設置し、徹底調査すること自体は妥当か
  • ② その調査に2億2000万円を払うことは妥当か、そして費用は最終的に誰が負担するのか
  • ③ 強制力を持たない仕組みで、その金額に見合う実効性ある調査ができるのか

①については、少なくとも調査そのものの必要性を認める考え方は成り立ちます。一方、②と③については、少なくとも現時点で、県民が費用の妥当性や調査の実効性を判断するために必要な情報が、十分に示されているとは言いにくい状況です。

結局、問題は「1億円が高いか、安いか」だけではありません。

1億円を必要だと判断したのは誰なのか。
その金額をチェックしたのは誰なのか。
そして、その調査結果と費用に対して、最終的に誰が責任を負うのか。

第三者委員会をつくれば、「誰が決めたのか」という問題まで第三者になるわけではありません。今後、個々の契約額や決裁の経路がどこまで明らかにされるのか。そこに、この調査の透明性が表れてくるはずです。


参考

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