在留手数料、10月1日から大幅引き上げ ── 『減額』に救われるのはごく一部という現実
令和8年(2026年)10月1日、在留資格の変更・更新、そして永住許可にかかる手数料が、これまでにない規模で引き上げられます。入管庁の説明資料には「減額」「免除」という言葉も並び、一見すると、生活に困っている人への配慮が用意されているかのように読めます。
しかし、実際の制度設計を仔細に検討すると、この配慮の対象はかなり限定されています。共同通信は、難民認定申請者について「大半は減額対象外とみられる」と報じ、支援関係者から懸念が示されていると伝えています。本稿では、まず引き上げ後の実額を正確に示したうえで、この減額・免除制度が実際にどれほどの人を救えるのか、事実と報道・論評を区別しながら整理します。
なお、今回の手数料は、申請時ではなく、審査の結果、許可を受ける際に納付するものです。「申請した時点で新料金を支払う」という意味ではありませんので、ご注意ください。
引き上げ後の手数料 ── 正確な実額
現行の手数料は、在留資格変更・在留期間更新ともに窓口6,000円、オンライン5,500円の一律制であり、永住許可は窓口10,000円です。これが10月1日から、許可される在留期間に応じた段階制へと移行し、次のとおりとなります。
| 許可される在留期間 | 窓口 | オンライン |
|---|---|---|
| 3か月以下 | 10,000円 | 10,000円 |
| 3か月超〜6か月以下 | 18,000円 | 15,000円 |
| 6か月超〜1年未満 | 25,000円 | 21,000円 |
| 1年 | 33,000円 | 27,000円 |
| 1年超〜3年未満 | 48,000円 | 42,000円 |
| 3年以上〜5年未満 | 64,000円 | 56,000円 |
| 5年以上 | 75,000円 | 65,000円 |
※オンライン申請では、10月1日以降、上記の手数料に加えて指定委託事業者への決済手数料がかかります。決済手数料は、許可される在留期間によって330円または550円です。たとえば1年の場合は27,330円、5年以上の場合は65,550円となります。
永住許可の手数料は、現行の10,000円から一挙に200,000円へと引き上げられます。20倍です。入管庁が公表した積算の考え方によれば、永住許可については、審査に要する実費を約2万円とし、永住許可後の平均在留期間が約13.5年であることなどを踏まえた「応益的要素」約18万円を加え、20万円とする考え方が示されています。
なぜ「値上げ」と言い切れるのか ── 減額・免除の限定性
入管法は、経済的困難その他特別の理由がある者について、手数料の減額または免除に関する規定を設けています。ただし、その運用実態を見ると、「困っている人は救われる」という単純な図式では説明できません。
減額 ―― 該当しても、値上げからは逃れられない
まず押さえておくべきは、減額の対象となったとしても、手数料が現行水準に戻るわけではないという点です。減額対象となった場合、在留資格の変更・在留期間の更新については手数料を1万円まで、永住許可については2万円まで減額することができます。現行の6,000円・10,000円と比べれば、それでも値上げであることに変わりはありません(ただし、許可される在留期間が3か月以下の場合は、改定後の料金そのものが1万円のため、減額の有無による差は生じません)。
そのうえで、減額対象となり得るためには、二つの要件を満たす必要があります。入管庁は、「生活保護法に規定する要保護者に準ずる程度に困窮していると認められる者」であり、かつ「人道上の配慮をする必要がある者」という枠組みを示しています。
とりわけ注目されるのが、難民認定申請者の扱いです。出入国在留管理庁が公表したガイドラインでは、減額の対象となり得る者について、生活保護法上の要保護者に準ずる程度の困窮と、人道上の配慮の必要性という二つの観点が示されています。難民認定申請者については、生活費や住居費などの「保護費」の支給を受けているケースが、減額対象となり得る具体例の一つとして位置づけられています。一方で、難民認定申請中であるという事実だけで、自動的に減額される制度ではありません。
共同通信は、こうした制度設計について、難民認定申請者の「大半は減額対象外とみられる」と報じ、支援関係者から懸念が示されていると伝えています。
免除 ―― 生活困窮を理由とする一般的な制度ではない
さらに注意したいのが「免除」です。免除の場合、手数料はかかりませんが、生活困窮を理由とする一般的な免除制度ではありません。
出入国在留管理庁によれば、免除の対象となるのは、外交・公用の在留資格に関する一定のケースのほか、台湾日本関係協会の職員等、駐日パレスチナ総代表部の職員等、これらに準ずる一定のケースです。したがって、一般の在留外国人が「生活が苦しい」という理由だけで手数料を免除される制度ではありません。今回公表された免除制度には、経済的困窮を理由とする免除は含まれていません。
「減額」と「免除」という二つの言葉が並ぶことで、幅広いセーフティネットがあるかのような印象を受けやすいのですが、実際には、免除は生活困窮とは別の枠組みであり、減額についても、対象となる要件を満たす人はかなり限定されています。
では、誰が新料金をそのまま負担することになるのか
今回公表された減額制度の対象となるためには一定の要件を満たす必要があり、その要件に該当しない多くの在留外国人は、原則として改定後の手数料を負担することになります。具体的には、減額の要件に該当しない就労者、留学生、家族滞在者など、多くの在留外国人が該当し得ます。
また、永住許可については、減額対象者の範囲が日本人、永住者または特別永住者の配偶者・子等に限定されています。したがって、それ以外の立場で永住許可を申請する場合は、そもそも減額の枠組みの対象にはなりません。
実務上の留意点
減額を希望する場合でも、いくつかの制約があります。
- オンライン申請では減額を受けられません。疎明資料を提出して減額を求める場合は、必ず窓口での手続きが必要です。
- 減額対象者に係る疎明資料(何を証拠として提出すべきか)の詳細は、本稿執筆時点では未公表であり、今後の案内を待つ必要があります。
- 令和8年9月30日までに窓口またはオンラインで申請を受け付けてもらった場合は、実際に許可が下りるのが10月1日以降になっても、旧料金(現行の金額)のままで済みます。値上げ前の金額で済ませたい人にとっては、9月30日までに申請を完了させることが、確実な対処法になります。
むすびに代えて
「減額措置・免除措置があります」という一文だけを読むと、経済的に厳しい在留外国人への配慮が十分に用意されているように感じられるかもしれません。しかし、その内実を丁寧に読み解けば、免除は生活困窮とは別の枠組みであり、減額についても、報道されているとおり、難民認定申請者の多くを含め、対象から外れる人が少なくないとみられます。
したがって、減額制度の対象となる人を除けば、多くの在留外国人にとって今回の改定は、実質的には負担増となります。本稿では、この改定を、一部の限定的な救済措置を伴う値上げとして捉えています。これから在留資格の変更・更新・永住許可を控えている人は、「自分は減額の対象になるかもしれない」という期待を前提に計画を立てるのではなく、原則として新しい料金表どおりの負担が生じるという前提で、資金の準備や申請時期の検討を進めるほうが現実的です。そのうえで、生活保護や難民認定申請者向けの保護費など、減額対象となり得る事情がある場合には、必要な疎明資料を準備したうえで、窓口で減額の可能性を確認する、という順序で臨むのが適切でしょう。
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