奨学金の金利、もう上限間近。これから借りる人も、返済中の人も今知るべきこと

金利が上がっているというニュースを見るたびに、教育費に関わる方々の間では、少し違う二つの不安が生まれているのではないかと思います。

これから奨学金を借りようとしている方は、「今から借りたら、高い金利で固定されてしまうのではないか」。

すでに奨学金を借りている方は、「自分の返済額は、これから増えていくのではないか」。

似ているようで、実は問いの中身が違います。今日は、この両方の疑問に、それぞれきちんとお答えしていきたいと思います。


最初に、用語を整理しておきましょう

日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金は、正式には「第一種奨学金」「第二種奨学金」と呼ばれますが、この名前だけではどちらがどちらか分かりにくいので、この記事では次のように呼ぶことにします。

  • 無利子奨学金(正式名称:第一種奨学金)……金利がかからない奨学金
  • 有利子奨学金(正式名称:第二種奨学金)……金利がかかる奨学金

金利上昇が関係してくるのは、基本的に有利子奨学金だけです。まずこの区別を頭に入れておくだけで、不安の輪郭がかなりはっきりします。

これから借りる方は、まず「自分はどこまで無利子奨学金を使えるのか」を確認することが、金利の不安そのものを小さくする第一歩になります。すでに借りている方も、「自分が借りているのは無利子奨学金か、有利子奨学金か」を、この機会に一度確認してみてください。無利子奨学金であれば、実はこの先の金利上昇はまったく関係がありません。


実は、金利はすでにここまで上がっています

抽象的な話に入る前に、まず現在の数字をお見せしたいと思います。

JASSOが公表している貸与利率の推移を見ると、有利子奨学金の利率は、ここ数年で大きく上昇しています。たとえば、令和3年度4月(2021年4月)に貸与を終了した場合、利率固定方式は0.268%、利率見直し方式は0.003%でした。それが令和8年度8月(2026年8月)には、利率固定方式が上限の3.000%、利率見直し方式が2.200%となっています。

特に固定方式は、0.268%から3.0%へと、5年ほどの間に11倍以上に上昇しています。

「金利が上がっている」というのは、決して大げさな表現ではありません。これから借りようとする方にとって、上限3%という数字は、もはや「万一のための備え」ではなく、「現実に意識しておくべき水準」になっています。すでに借りている方にとっても、自分が選んでいる方式が「利率固定方式」なのか「利率見直し方式」なのか、そして現在どのような利率が適用されているのかを確認する意味は、決して小さくないと思います。


【これから借りる方へ】今から借りると、金利は「そのとき」に決まります

これから有利子奨学金を借りようとしている方が抱く不安は、「これから金利が上がっていく中で借りたら、高い金利で固定されてしまうのではないか」というものだと思います。

これについては、二つのことをお伝えしたいと思います。

一つ目は、有利子奨学金の利率は、貸与が終わるタイミングでの市場金利などをもとに決まるということです。今すぐ借りたとしても、在学中に金利がどう動くかによって、最終的な利率は変わってきます。つまり、「今借りれば今の金利で固定される」という単純な話ではありません。

二つ目は、それでも年3%という上限が法律で決まっているということです。先ほどお伝えした通り、この上限にはすでに到達していますが、これ以上、有利子奨学金の利率がさらに膨らむことはありません。これから借りる方にとって、これは重要な安心材料です。「青天井に上がり続けるかもしれない」という心配は、少なくとも制度上はしなくてよいのです。

ですから、これから借りる方が本当に考えるべきなのは、「今、金利が何%か」ではなく、上限に近い金利がかかることを前提として、卒業後、無理なく返せる金額はいくらかから、借りる金額そのものを逆算することです。この点は、後ほど詳しくお話しします。


【もう借りている方へ】自分の返済額が、これから変わるかどうかは「方式」次第です

一方、すでに有利子奨学金を借りている方の不安は、少し違います。「自分は今後、返済額が増えるのだろうか」という疑問です。

この答えは、実はご自身がどちらの方式を選んでいるかで、はっきり決まります。

有利子奨学金には、利率固定方式と利率見直し方式という、二つの決め方があります。

利率固定方式を選んでいる方は、貸与が終わった時点の利率が、完済するまでずっと変わりません。ですから、今どれだけ世の中の金利が上がっても、あなたの返済額には影響がありません。まずここを確認していただくだけで、安心できる方も多いはずです。

利率見直し方式を選んでいる方は、おおむね5年ごとに利率が見直されます。先ほど見たように、この方式の利率も0.003%程度から2.2%まで上昇していますので、次の見直しのタイミングで、ご自身の利率が上がっている可能性は十分にあります。逆に将来、金利が下がれば、負担が軽くなる可能性もあります。

まだ自分がどちらの方式か分からない、という方は、JASSOの「スカラネット・パーソナル」というマイページで確認できます。今の金利環境で不安を感じている方は、まずここを確認することを、最初の一歩としておすすめします。

なお、貸与終了前の所定の期限内であれば、方式を変更できる場合がありますが、貸与終了後は変更できません。この点は、これから借りる方にとっても、選択の際に知っておいていただきたいポイントです。


両方に共通する落とし穴:「3%」を数字のまま受け取らない

これから借りる方にも、すでに借りている方にも、共通してお伝えしたいことがあります。それは、「3%」という数字を、パーセンテージのまま受け取らないでほしいということです。

たとえば500万円を年3%、20年間で返すと仮定して、単純な元利均等返済で計算してみます。月々の返済額はおよそ2万8千円、返し終えるまでの総額はおよそ666万円になります。つまり、500万円を借りて、利息だけでおよそ166万円が上乗せされる計算です。

実際のJASSOの返還額は、貸与を受けた月数や返還方法によって変わりますので、これはあくまで一例ですが、数%の金利でも、借入額と返済期間が大きくなれば、負担は決して軽くないということがわかります。しかも、今まさに上限に近い、あるいは上限そのものの金利で借りている方が増えているという状況を踏まえると、これは他人事ではありません。

これから借りる方にとっては、借りる金額を決める際の判断材料に。すでに借りている方にとっては、ご自身の残りの返済額を見直すきっかけに、それぞれなればと思います。

家計に効いてくるのは、「金利」という比率そのものではなく、金利×借入額×返済期間という掛け算です。この視点は、借りる前でも借りたあとでも、変わらず大切です。


「無利子だから安心」も、実は半分しか正しくありません

無利子奨学金を利用している方、あるいはこれから利用しようとしている方にも、一つだけ注意点があります。無利子だから安心、という理解は、半分しか正しくありません。

無利子であるということは、利息の負担がゼロだという意味でしかないのです。借りた元金そのものは、当然すべて返済しなければなりません。100万円を無利子で借りれば100万円を、500万円を無利子で借りれば500万円を、いずれ返す必要があります。金利がゼロであることと、返済の負担がゼロであることは、まったく別の話なのです。


【これから借りる方へ】借りる前に、この順番で考えてみてください

これから借りる方には、次の順番で考えることをおすすめします。

  1. 給付型奨学金や、大学独自の授業料減免制度がないか、まず確認する。返す必要のないお金を、先に使い切りましょう。
  2. 無利子奨学金を、条件の許す範囲でできるだけ優先的に利用する。
  3. それでも足りない場合に、有利子奨学金を検討する。今の金利水準を踏まえれば、上限3%近辺での試算をしておくと安心です。
  4. 有利子奨学金を利用するなら、固定方式と見直し方式の違いを理解したうえで選ぶ。
  5. 借りる前の段階で、卒業後の返済額を一度シミュレーションしておく。

この順番を踏むだけでも、「なんとなく足りない分を借りる」という状態から、「借りる前に、返済までの見通しを持つ」という状態に変わります。


【もう借りている方へ】今できることは、意外とあります

すでに借りている方にとっても、今から見直せることがあります。

まず、自分の方式を確認すること。 固定方式であれば、今回の金利上昇はそもそも関係がありません。見直し方式であれば、次の見直しがいつなのか、確認しておきましょう。

生活に余裕ができたら、繰上返還も選択肢になります。 元金を早く減らせば、その分将来発生する利息も減らせます。ただし、貯金をすべて返済につぎ込むのは避けてください。病気や失業といった、突然の出費に備える生活防衛資金は別に確保しておく必要があります。

そして、返済が苦しくなったら、一人で抱え込まないこと。 JASSOには、返還額を減らす「減額返還」や、一定期間返還を待ってもらえる「返還期限猶予」といった制度があります。大切なのは、「払えなくなってから対応する」のではなく、「払うのが難しそうだと感じた段階で相談する」という順番です。延滞をそのままにしてしまうと選べる道は狭くなりますが、早めに動けば、制度の助けを借りられる余地は大きく残っています。


金利上昇は「利息の話」ではなく「進学と生活設計の話」です

これから借りる方にとっても、すでに借りている方にとっても、金利の上げ下げそのものをコントロールすることはできません。しかし、コントロールできることは、それぞれの立場で確かにあります。

これから借りる方であれば、無利子の枠をどこまで使えるか確認すること、借りる金額を必要最小限に絞る努力をすること、固定方式と見直し方式のどちらが自分に合っているか考えること。

すでに借りている方であれば、自分の方式と現在の返済状況を確認すること、余裕があれば繰上返還を検討すること、苦しくなったら早めに相談すること。

奨学金は、進学の機会を広げてきた大切な制度であり、それ自体を否定する必要はありません。ただ、貸与型である以上、それは名前が何であれ、返済の義務があるお金です。金利がすでに上限近くまで上昇している今だからこそ、これから借りる方も、すでに借りている方も、それぞれの立場で「今、自分にできること」を、この機会に一度確認していただければと思います。


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