【令和9年度概算要求シリーズ②】建設業の人手不足対策、令和9年度はどう強化される?

「令和9年度(2027年度)概算要求」を見ると、建設業の担い手不足に対する国の危機感がこれまで以上に色濃く表れています。処遇改善・DX・人材確保・外国人材の受入れという4つの切り口から、建設業関連の中小事業者が押さえておきたいポイントを整理しました。あわせて、「建設業の人手不足」がなぜ地域に住む私たちの生活にも関わるのかについても触れていきます。

(このシリーズの第1回「令和9年度の中小企業向け補助金、何が変わる?」もあわせてご覧ください。)

なぜ建設業の人手不足が「みんなの問題」なのか

建設業は、道路や橋、上下水道といったインフラの維持・修繕、住宅の建設・リフォーム、そして災害時の復旧作業まで、私たちの暮らしを日常的に支えている産業です。国土交通省の統計でも、建設業の就業者は他産業に比べて高齢化が進んでおり、若い世代の入職が減っています。

もし地域の建設会社が人手不足で立ち行かなくなると、「災害が起きたときにすぐ対応してくれる会社が近くにない」「橋や水道管の老朽化対策が追いつかない」といった形で、私たちの生活に直接影響が及ぶ可能性があります。今回の概算要求で建設業支援が手厚くなっているのは、こうした背景があるためです。

建設産業の供給力強化事業が拡充要求

国土交通省は「建設産業の供給力強化事業」として、処遇改善・入職促進・DX・リスキリングを計画的に進める事業者・団体への支援を拡充要求しています(概算要求額1,982百万円、うち投資枠1,130百万円)。この事業の内数として、以下のテーマが具体的に位置づけられています。

テーマ 内容
建設DX ICT・AI・ロボット等、設計から施工までの先端技術導入の促進
建設人材 技能向上、新たな教育訓練体系による資格取得・リスキリング支援
外国人材 建設分野における育成就労・特定技能の適正かつ円滑な受入れ・定着
取引適正化 改正建設業法に基づく労務費確保・資材高騰の価格転嫁対策、工期の適正化

いずれも「上記事業の内数」として整理されており、個別の補助スキームや対象者の詳細は今後の制度設計・公募要領で確定するとされています。

「建設DX」とは何をすることなのか

DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、単にパソコンやITツールを導入することだけでなく、業務の進め方そのものをデジタル技術で変えていくことを指します。建設業のDXでは、具体的には次のような取り組みが想定されます。

  • ドローンによる測量、3次元データ(BIM/CIM)を使った設計・施工管理
  • 建設現場での重機の自動化・遠隔操作、AIを使った施工計画の最適化
  • 書類のデジタル化による事務作業の削減

これらは単なる効率化にとどまらず、危険な作業を機械に任せることで労働災害を減らす効果や、少ない人数でも工事を進められるようにする効果が期待されています。

なぜ今、建設業者が知っておくべきなのか

これらの施策は、単独の補助金というより「公共工事の入札参加資格」や「経営事項審査(経審)」とも密接に関わってくる可能性があります。経審とは、公共工事を発注者(国や自治体)から直接請け負う建設業者が必ず受けなければならない審査で、会社の経営状況や技術力を点数化するものです。経審の結果は、公共工事の入札参加資格審査における客観的な評価として利用され、発注機関によっては他の評価項目とあわせて順位付けや格付け等に反映されます。

ICT・AI等の導入や資格取得・人材育成は、建設会社の生産性向上や技術者確保につながる取り組みです。公共工事への参入を考える事業者にとっては、経営事項審査や入札参加資格とあわせて、自社の設備・人材戦略を見直すきっかけにもなります。また、外国人材の受入体制整備は、慢性的な人手不足を補う実務的な選択肢として、今後さらに重要性が増していきます。

つまり、これらの施策は「補助金がもらえるかどうか」という単発の話ではなく、公共工事に参入・継続していくための土台づくりとして捉えることができます。

労務費・価格転嫁対策にも注目

改正建設業法に基づき、労務費の確保や資材高騰分の価格転嫁、工期の適正化を促進する取り組みも拡充が要求されています。これまで建設業界では、「発注者や元請けからの価格に、下請け業者が従わざるを得ない」という構造が長年の課題とされてきました。労務費(現場で働く職人・作業員の人件費)が適正に確保されないと、賃金が上がらず、若い世代が建設業を選ばない、という悪循環につながります。

下請取引が多い建設業においては、見積り・契約段階での対応が今後さらに求められる可能性があります。契約書や見積書の様式を今のうちに見直しておくことをおすすめします。

建設業者が今からできる3つの準備

  1. 自社のICT・AI活用状況を棚卸しする 省力化投資促進の対象になりそうな設備・システムがすでにあるか、導入予定があるかを整理しておきましょう。

  2. 技術者の資格取得計画を立てておく リスキリング支援策が具体化した際にすぐ活用できるよう、社内の資格取得ニーズを事前に洗い出しておくと動きが早くなります。

  3. 外国人材の受入れを検討する場合は情報収集を始める 育成就労制度は2027年4月1日に運用が開始されます(詳細はシリーズ第4回「外国人材受け入れルールの変化」で解説しています)。監理支援機関の許可申請などの施行前手続もすでに始まっており、対応スケジュールの確認が必要です。

まとめ

令和9年度概算要求では、建設業の「処遇改善・DX・人材確保・外国人材受入れ」が一体的に強化される方向性が示されています。ただし、具体的な補助スキームや対象者はまだ確定しておらず、今後の予算編成過程で内容が固まっていきます。公共工事への参入・継続を見据える事業者にとっては、制度の詳細が固まる前から準備を進めておくことが有利に働く分野です。そして、これは建設業に携わる方だけでなく、地域のインフラを支える仕組みとして、私たち住民の暮らしにもつながる話です。

本記事は、国土交通省「令和9年度予算概算要求概要」(2026年8月公表)等の公表資料をもとに作成しています。制度の詳細は今後変更される可能性があるため、実際の活用にあたっては必ず公募要領等の一次情報をご確認ください。

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