大学の「イメージ戦略」、鵜呑みにする前に知っておきたいこと
最近、大学の広報が変わってきています。「うちの大学にはこんな学部があります」「就職率は何%です」という説明だけでなく、「なんだか面白そうな大学だ」というイメージそのものを作る広報が増えています。
これは受験生にとっても、大学関係者にとっても、そして大学と直接関わりのない市民にとっても、知っておいて損はない話です。大学は学生を集めるだけの存在ではなく、地域や社会の中で一定の影響力を持つ存在だからです。今回はそれぞれの立場から、この流れの「良い面」と「注意すべき面」を整理してみます。
まず何が起きているのか
以前の大学広報は、パンフレットに情報をぎっしり詰め込むスタイルでした。学部、学費、就職実績、施設……とにかく説明する。
最近の広報は違います。「この大学は、こういう性格の大学です」というイメージを、SNSや話題性のある企画を通じて社会に印象づけようとしています。情報を並べるのではなく、印象に残る物語を作る、というアプローチです。
これ自体は自然な変化だと思います。大学の選択肢が多く、情報を並べるだけでは受験生に届きにくい時代になっているからです。
受験生のみなさまへ:「面白そう」と「自分に合う」は別のもの
大学が「面白い」「挑戦的」というイメージを打ち出すのを見ると、つい惹かれます。それ自体は悪いことではありません。
ただ、覚えておいてほしいのは、大学の「印象」と、自分がその大学で過ごす4年間が「合っているか」は、まったく別の話だということです。
イメージが魅力的だから選んだけれど、実際入ってみたら授業の進め方や周りの雰囲気が思っていたのと違った——こうしたことは、大学が広報に力を入れるほど、起こり得ます。イメージを強く打ち出すほど、受験生の側に「きっとこういう大学だろう」という期待も強くなります。その期待が大きい分だけ、実態との間にズレがあったときに感じるギャップも大きくなりやすい、ということです。
だから、オープンキャンパスに行く、実際にその大学の学生に話を聞く、シラバスを確認するなど、広報のイメージだけに頼らない情報源を必ず一つ以上持つことをおすすめします。
大学関係者のみなさまへ:イメージは「作った後」の方が難しい
広報担当の方にとって、「情報を伝える」から「イメージを作る」への転換は魅力的に見えると思います。実際、うまくいけば大きな効果があります。
ただ、ここで見落とされがちなのが、イメージは一度定着すると、後から軌道修正がしにくいという点です。
情報は間違っていれば訂正できます。しかし「挑戦的な大学」というイメージを作った後で、経営上の理由で保守的な判断をせざるを得なくなったとき、「らしくない」という評価が生まれてしまいます。イメージを作った側が、そのイメージに縛られるという逆転が起きるのです。
もう一つ大事なのは、話題になったかどうかと、実際の教育の質が上がったかどうかは別の指標だということです。広報の目的が志願者を増やすことであれば、志願者数はたしかに重要な指標です。しかし、それは大学そのものの価値を測る指標とは限りません。入学後の満足度や、学生が「この大学を選んでよかった」と思っているかどうかまで見て、初めて広報の効果を評価できます。
派手な仕掛けができない規模の大学であっても、諦める必要はありません。むしろ大事なのは派手さではなく、「うちの大学は、こういう大学だ」という一貫した姿勢を、地味でも繰り返し発信し続けることです。教員と学生の距離が近い、特定分野に強い、地域と深く関わっている——こうした地味な特色も、バラバラに紹介するのではなく、一つの大学像として一貫して語り続ければ、十分に伝わります。
市民のみなさまへ:「話題になっている大学」が「良い大学」とは限らない
大学とは直接関わりがなくても、ニュースやSNSで「あの大学、面白いことをやっている」という話を目にすることは多いと思います。
ここで一つ意識してほしいのは、大学が話題になる理由には、研究成果、学生の活動、教員の発言、地域活動、スポーツなど、さまざまなものがあるということです。その中には、広報の巧みさが大きく関わっている場合も少なくありません。
もちろん、話題になっている取り組みが実際の研究成果に基づいていることもあり、その場合はれっきとした実力の表れです。しかし、「話題性がある=優れた大学」と単純に結びつけて評価してしまうと、地道に良い教育をしているけれど広報が控えめな大学を、実態以上に低く見てしまうことになりかねません。
大学のニュースに触れるときは、「これは広報として上手だ」という視点と、「これは実際に大学の中身が優れている証拠だ」という視点を、分けて考える習慣があると、情報に振り回されにくくなります。
まとめ
大学広報が「イメージを作る」方向に進化していくこと自体は、時代の流れとして自然です。ただし、その流れには見えにくいコストが伴います。
- 受験生にとっては、イメージと実態のギャップに気をつける必要がある
- 大学関係者にとっては、作ったイメージに自分たちが縛られるリスクと、志願者数だけで成果を測る危うさがある
- 市民にとっては、話題性と教育の質を混同しないことが大事
派手な広報のニュースを見たとき、「なるほど、うまいな」で終わらせず、その裏にある「見えていない部分」まで想像してみる。学生は実際にどう感じているのか、授業や研究はどうなっているのか、その取り組みは一時的な話題なのか、それとも大学の日常として根付いているのか。それが、この流れと上手に付き合うコツだと思います。
参考記事
「お行儀のいい大学広報」を捨てた近畿大学に、何が起きたのか【新人さんのためのマーケティング講座 Season8 vol.9】STUDY HACKER(スタディーハッカー)
https://studyhacker.net/kindai-university-digital-pr

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