「今治の獣医学部」は今――加計問題から8年、疑惑と実績のその後

加計問題とは、どんな問題だったのか

加計問題は、単に「新しい獣医学部ができた」という話ではありません。焦点は、当時の安倍晋三首相と長年の友人だった加計孝太郎さんが理事長を務める加計学園に対して、政府が特別に有利な扱いをしたのではないか、という疑惑でした。

もともと今治市と愛媛県は2007年頃から、獣医学部を誘致したいと国に何度も提案していました。国家戦略特区の前身にあたる「構造改革特区」の枠組みでは、実に15回も提案を重ねていたと国会でも説明されています。つまり、「安倍政権になって突然、加計学園のために作られた」という単純な話ではないのです。

ただし、獣医師の数や教育の質を理由に、獣医学部の新設は長い間認められていませんでした。そこで安倍政権は「国家戦略特区」という規制緩和の仕組みを使い、新設への道を開こうとします。2015年には新設を検討する際の条件(いわゆる「石破4条件」)が定められ、2016年11月には特区制度の中で新設を可能にするルール変更が正式に決まりました。そして最終的に、今治市での開設が加計学園に決まったのです。

ここで問題になったのが、開学までのスケジュールが異例なほど短く設定されたこと、同じく新設を目指していた京都産業大学が最終的に候補から外れたこと、そして2017年に文部科学省の内部文書に「総理のご意向」といった趣旨の記載があったと報道されたことです。当時の文部科学事務次官だった前川喜平さんは、官邸側から手続きを急ぐよう働きかけを受けたと国会で証言しました。一方、政府は「加計学園を特別扱いした事実はない」と一貫して否定し続けました。

安倍首相と加計さんが長年のゴルフ仲間・食事仲間だったことも、政治的には大きな話題になりました。愛媛県が後に提出した文書には、加計理事長が首相と面会し構想を説明したという記録もありましたが、その内容自体は安倍首相側が認めていません。

こうして見ると、「行政手続きに不自然な点や説明不足が多く、大きな政治問題になったのは確かだが、安倍首相が直接便宜を図るよう指示したと断定できる決着はついていない」というのが、かなり公平な整理だと言えそうです。「獣医学部が本当に必要だったか」という政策の議論と、「その選定プロセスが公平だったか」という行政手続きの問題が、混ざり合ってしまったところに、この問題の分かりにくさがありました。

8年経った今、どうなっているのか

2018年に開校した今治の獣医学部は、今ではかなりの人気校に育っています。志願者数は4年連続で全国トップ、2026年度は5,000人を超える志願者を集めました。獣医師の国家試験でも、合格率78.9%、合格者数は全国の獣医系17大学の中で4位という結果を残しています。

一方で、この学部を作った本来の目的――四国・愛媛地域で活躍する産業動物獣医師や公務員獣医師を増やすこと――については、まだ十分に達成できていないと、加計役理事長自身がインタビューの中で率直に認めています。地域貢献という当初の大義名分は、まだ道半ばということです。

政治問題として記憶されがちな「加計問題」ですが、8年経った今、教育機関としての実績も少しずつ見えてきました。疑惑の記憶と、その後の実績。両方を分けて眺めることで、当時の報道だけでは分からなかった全体像が見えてくるように思います。


参考:「今治の獣医学部」は今――加計役理事長が初めて語る、8年間の歩みと「次の10年」(大学ジャーナルオンライン)

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