【続編】「日本が鍵」と名指しされても動かない政府 - ICC赤根所長制裁、これでいいのか
昨日(8月21日)、米国のトランプ政権がICC(国際刑事裁判所)の赤根智子所長を制裁対象に指定した経緯についてお伝えしました。そのわずか1日のうちに、事態ははっきりと一つの方向を指し示しています。
赤根所長自身が、名指しで「日本」に助けを求めている。それなのに、当の日本政府は「大変残念」を繰り返すだけ。これはもう、外交の慎重さとか、同盟関係への配慮とか、そういう言葉で誤魔化していい段階ではないと思います。
赤根所長本人が「日本の支援が重要な鍵」と言った
8月21日、赤根所長は文藝春秋を通じて談話を公表しました。そこにはこう書かれています。
制裁について「ある程度予期していたことで驚きはない」としたうえで、「重要なのは、これを国際的な『法の支配』の終焉(しゅうえん)の始まりとさせないこと」と述べ、そして最後に――
「日本と日本の皆様の支援が重要な鍵となるだろう」
これは、他人事のコメントではありません。制裁で資産を凍結され、米国への渡航すら禁じられた本人が、出身国である日本に向けて、事実上の救援要請を出しているのです。同じ日、赤根氏は読売新聞のインタビューでも「ICC加盟国に伝えたい。『法の支配』の理念を堅持し、重大な犯罪から被害者を守る世界をともに守ってほしい」と、加盟125の国と地域に向けて支援を訴えています。
一人の裁判官が、孤立無援の中で、それでも「法の支配」という理念を守ろうと声を上げ続けている。この構図の前で、日本という国はいったい何をしているのでしょうか。
オランダは動いた。日本は「大変残念」で止まっている
赤根氏は20日、ICCが本部を置くオランダのベーレンドセン外相と会談しました。会談後、外相はSNSで「オランダはICCを断固支持する」と即座に表明し、赤根氏の統率力を称賛しました。
一方の日本。高市早苗首相は「大変残念に思っている。これからも米国を含む関係国と意思疎通を継続しながら対応していく」。外務省は「大変残念だ」という報道官談話。それだけです。
正直に言います。「残念」は感想であって、対応ではありません。自国が最大の資金拠出国として支えてきた国際機関のトップが、同盟国から狙い撃ちにされているのに、抗議の言葉すら明確に発しない。これのどこが「法の支配を一貫して支持している」国のふるまいなのでしょうか。
しかも外務省幹部は「ICCにとっていいことであるわけがない」と不快感を示したとされていますが、日本がICCを一貫して支持してきた立場に変わりはないと強調した上で、結局は「米国との意思疎通を続ける」という言葉で締めくくられています。「意思疎通を続ける」がすべての行の締めくくりになっている。これは事実上、何もしないという宣言に等しいのではないでしょうか。
与党内からも「常軌を逸している」の声
さすがにこの生ぬるい対応には、自民党内からも異論が噴き出しています。自民の閣僚経験者は「同盟国の人間を制裁対象にするとは、トランプ氏は常軌を逸している。政府は米国にもっと厳しくものを言うべきだ」と批判したといいます。
超党派の「人権外交を超党派で考える議員連盟」も、19日の緊急声明で今回の制裁を「ICCを機能不全に陥らせること自体を目的としている」と断じ、政府に対して首相・外相名での明確な抗議と制裁の即時撤回要求を求めています。専門家からも同様の声が上がっています。同志社大学の三牧聖子教授は、日本は抗議し、撤回を求めるべきだと、対米追従一辺倒の姿勢に警鐘を鳴らしています。
つまり、「もっと強く言うべきだ」という声は、もはや一部の野党やリベラル層だけのものではありません。与党の重鎮からも、超党派の議員連盟からも、専門家からも、同じ方向の批判が集中している。これだけ声が揃っているのに、なぜ政府は動かないのでしょうか。
「日米同盟があるから仕方ない」で済ませていいのか
政府や外務省関係者の本音として伝えられているのは、「日米同盟は盤石とは言えない」「米国と事を構えるのは得策ではない」「トランプ政権の姿勢を変えるのは非現実的だ」といった、諦めにも似た現実論です。
分かります。安全保障を米国に依存している以上、対米批判にはリスクが伴う。それは事実でしょう。
でも、超党派議連が言うように、「日米同盟の堅持」と「法の支配の擁護」は二者択一ではありません。抗議すること、撤回を求めることは、同盟を壊す行為ではなく、同盟国としてまともにものを言う権利の行使のはずです。それすらできずに「意思疎通を継続する」としか言えない政府に対して、私はもう「慎重」という言葉で片付ける気にはなれません。これは単純に、弱腰です。
日本は今こそ、言葉ではなく態度で応えるべきだ
赤根所長は「日本の支援が鍵」だと、はっきり名指ししました。これに対して日本が返せる答えは、これ以上先延ばしにできないはずです。
- 首相・外相の名前で、米国に対し明確な抗議と制裁撤回の要求を今すぐ行うこと
- ICCへの資金拠出・人的支援を、これまで以上に目に見える形で積み増すこと
- オランダをはじめとする同志国と歩調を合わせ、声明ではなく行動として連帯を示すこと
- 赤根氏個人の安全と職務継続に対して、具体的な支援策を用意すること
赤根所長は孤立無援の中でも、法の支配という理念のために立ち続けています。その本人が「日本が鍵だ」と訴えている以上、日本がこれ以上「残念だ」を繰り返すだけの国であってはならないと、私は強くそう思います。
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