高専が「就職の橋渡し役」に! 長野高専の新しい挑戦
2026年8月、長野工業高等専門学校(長野高専、長野市)が、これまでにない新しい取り組みを始めたというニュースが報じられました。それは、学校自身が「職業紹介」の仕事を始めたというものです。
「職業紹介」というと、リクルートやマイナビのような民間の人材紹介会社をイメージする方が多いかもしれません。長野高専は、国が定めた職業安定法というルールに従って、正式にこの職業紹介の事業に参入しました。学校いわく、このような取り組みは全国の高専でも初めてだそうです。
どんな仕組みなのでしょうか
仕組みはシンプルです。
- 学生・卒業生:長野高専の在校生(これから卒業する新卒者)と、すでに社会に出ている卒業生(既卒者)が対象です
- 仲介する組織:学校を支援する「長野高専技術振興会」という団体が、企業と人材の情報をとりまとめ、マッチングを行います
- 採用したい企業:技術振興会に加盟している、県内外の約400社が対象です
学生や企業が登録するときの費用は無料です。実際に採用が決まったときだけ、企業側が紹介料を支払う仕組みになっています。この紹介料は、一般的な人材紹介会社よりも安く設定されているそうです。
7月から、企業と学生・卒業生の登録が始まっています。
なぜこの取り組みがすごいのでしょうか
① 卒業生になっても、ずっと頼れる存在に
これまでの学校の就職支援は、多くの場合「これから卒業する学生」が対象でした。しかし今回の仕組みは、卒業してから何年も経った人でも使えるのが大きな特徴です。転職を考えたときなど、人生の節目節目でこのサービスを頼りにできるというわけです。学校の担当者も、生涯にわたって使ってもらえるサービスにしたいと話しています。
② 学校ならではの「信頼」を生かしている
普通の人材紹介会社は、企業側も求職者側も「本当に信頼できる相手か」を一から確認しなければなりません。しかし長野高専の場合、紹介する学生・卒業生は全員、学校がしっかり教育してきた人たちです。企業側も長年、この学校の卒業生を採用してきた実績のある会社ばかりです。学校とのつながりという「信頼の土台」があるからこそ、安心して人を紹介し合えるのです。
③ もうけたお金を地域のために使う仕組み
この事業で得た収益は、企業との共同研究や、学校が地域向けに開く講座などに使われる予定です。つまり、「お金を稼いで終わり」ではなく、得た利益を教育や地域のために還元するという考え方が根底にあります。
そもそも、なぜこの仕組みが必要なのでしょうか
背景には、高専生の「引く手あまた」ぶりがあります。長野高専では、2025年度の求人倍率がなんと27.1倍にものぼりました。これは、1人の学生に対して27件以上の求人があるということです。全国的に見ても、高専生に対する求人倍率は20倍を超える状況が続いており、人手不足やIT・技術系人材への需要の高まりを背景に、高専生の人気は年々高まっています。
ところが困ったことに、長野高専の卒業生のうち、地元・長野県内で就職する人は、県外で就職する人の3分の1程度にとどまっています。せっかく優秀な人材を育てても、多くが県外に出て行ってしまうのです。地元の企業からすれば、「人気の学生をどうにか地元にとどめたい」というのが切実な願いなのです。
今回の職業紹介の仕組みは、こうした人材の流出という地域の課題に、学校自身が向き合おうとする取り組みだと言えます。
長野県内では、他にも似た動きがあります
実は長野県内では、「信州産学みらい共創会」という産学連携組織も、2025年から同じような有料職業紹介の事業を始めています。こちらは信州大学工学部の卒業生を対象に、定年退職者を含めたUターン人材を県外から呼び戻すことを目指していますが、今のところ実績はまだ十数件にとどまっているそうです。
長野高専の場合、20年以上かけて会員企業を96社から約400社まで増やしてきた「技術振興会」という土台がすでにあったからこそ、この新しい取り組みにスムーズに踏み出せたと考えられます。
まとめ ― 学校の新しい役割
長野高専の取り組みは、次の3つの点で、他の学校にとっても参考になりそうです。
- 卒業後も続く学校とのつながりを、正式な仕組みとして作り直したこと
- 学校が持つ「信頼」をうまく生かして、人と企業をつなげていること
- 得た利益を、地域や教育のために還元する仕組みにしていること
これからも理系の人材不足は続くと見られています。そんな中で、学校自身が卒業生の人生に長く寄り添いながら、地域の企業や産業を支えていく――長野高専のこの試みは、これからの学校のあり方を考えるうえで、とても興味深い事例だと感じます。

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