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アドミニストレーターの創造(5)

中京大学の 刀根實 氏が書かれた 「大学組織と大学行政管理職員」 のご紹介も今回が最終となりました。 これまで、 アドミニストレーターの要件(備えるべき能力) として、 1 数字(財務関連諸表)が読める職員(Finance) 2 市場動向を理解して先手が打てる職員(Marketing) 3 ITを難なくこなせる職員(Digital Skill) 4 英語(外国語)が話せる職員(English) 5 人間の理解ができる職員(Communication) 6 国内外で交流ができる職員(Network)  をご紹介してきました。 今回は、加えて、 7 専門知識なら教授には負けない職員(Professional) 8 危機管理ができる職員(Risk Management)  です。 Skill 8 専門的知識 さらに、事務職員もその専門性を高める必要があるという点において、 Professional を挙げておきたい。事務職員にとっては、先の大学組織のところでも触れた専門性がますます重要になってくる。大学のみならず日本社会には、かつて三種の神器と呼ばれた雇用システムが今も根付いている。いわゆるジェネラリスト養成のため、組織内のいくつかの部署を経験する人事異動システムもそのひとつである。現在、我が国は社会全体がかつてのいいものは新しい世紀に残し、古くて使えないものは古い世紀に置いていこうとしている境目の時代に生きている。こうした中、日本式人事システムは新しい形になって、次世代に引き継がれなければならない。中途採用を利用してその専門性を競わせるといった従来にはないシステム作りを、中京大学でも早くから導入してきたと聞く。事実、中京大学では現行事務職員のうち、中途採用者の比率が約半数近くになっている。 また行政管理の出来る職員ならば、自らの専門性において、たとえ博士号を持っていなくても、教育職員と同等な議論が可能、あるいはそれ以上となることが理想であろう。その意味では、事務職員が夜間大学院や通信教育などを利用して、自己啓発を行っていけるよう組織的なバックアップ作りが不可欠である。学内に於いて、学生達に資格・免許を取得せよ、と叫ぶ前に自分達の自己研修をおろそかにしてはならない。また、米国大学にて留学生を扱うような国際関連部署では、博士号を持つ...

アドミニストレーターの創造(4)

中京大学の 刀根實 氏が書かれた 「大学組織と大学行政管理職員」 の中から、アドミニストレーターとして備えるべき能力を前回に続きご紹介します。 今回は、 「Digital skill」、「English」、「Communication」、「Network」 です。 Skill 4 デジタル・スキル そこで、3つ目の能力として忘れてはならないのが、 Digital Skill である。ワープロや表計算はもとより、ウエブサイトからの国内・外のあらゆる情報を、自らの大学経営にとって必要なものと、そうでないものとに識別する能力までも含めてのスキルである。ただ単にキーボードを打てるだけでは全く意味がない。膨大な情報量の中から迅速かつ正確に、明日への布石となる情報を手に入れておくことは、教育産業という戦場で戦う事務職員の第一歩である。米国の高等教育研究産業で働く人々によく知られている 「The Chronicle of Higher Education」 のホームページからは、小規模大学の学長職から、学部長や事務職員など、数百にも上るポストの募集が常時行われている。日産自動車やマツダ自動車の例を見るまでもなく、国内に良い人材を見つけることが出来ないなら、海外から優秀な能力を持った人材を捜し出す時代がすでに始まっている。 また、米国の進んだデジタル・テクノロジーはすでに大学にも導入されている。ボイスメールシステムがその一例である。このシステムは米国大学では学生教育サービスの一環として、頻繁に利用されている。ボイスメールシステムとは、教員研究室あるいは各学部センター事務室に設置してある電話機に、ホストコンピュータを利用しての留守番電話機能サービスのことである。これは、早急に連絡が必要な場合にメッセージを残すことにより早い段階で相手に伝えることが出来るため、非常に有効な手段として全教職員・学生に利用されている。また、学生からの問い合わせにも適宜柔軟に対応可能となり、学生サービス向上の一端を担っている。我が国でもコンピュータセンターなどに設置してあるサーバーを拠点とし、この種のサービスを展開することにより教職員相互、または学生間とにおいて無駄のない伝達があらゆる場面で対応可能になると思われる。国を挙げてのIT革命は、大学を始めとする高等教育研究機関から真っ先に始めなくて...

アドミニストレーターの創造(3)

中京大学の 刀根實 氏が書かれた 「大学組織と大学行政管理職員」 をご紹介する第3回目の今回は、「選ぶ側から選ばれる側への転換、すなわち、大学内の主導権が、教授団から学生に移行するという社会背景の中で、大学は過去の成功体験やぬるま湯体質から決別することが必須である」こと、そして、「行政管理のできる資質と能力を持つ『アドミニストレーター』を育成できるか否かが大学の勝敗を分かつ」こと、さらには「どういった能力を持つアドミニストレータを創造すべきなのか」についてのご指摘です。 1 大学行政管理職員創造のための新モデル 選ぶ側から選ばれる側への転換=哀願者からお客様への転換。我が国における大学の主導権は、教授団や理事会から市場支配力(marketpower)を持った消費者としての学生に移行する。新たなる世紀を迎えようとしている今、アカデミズムから学生消費者主義への移行、そしてそこで働く事務職員によるアドミニズムの創造へと進化しなくてはならない時代となった。 古くから大学は「象牙の塔」として、あたかも聖域のように扱われてきた。教授会という強大な力のもと、実社会と乖離した組織として存続してきたと言ってもよい。一橋大学の竹内教授は「世界レベルの競争力を構築するには、産業全体のダイナミズムが必要である。」と説き、その第一歩は「個々の組織が過去の成功体験やぬるま湯体質ときっぱり決別し、自立すること。」と結んでいる。我が国の高等教育業界に於いても、トップ・マネジメントからのドラスティックな意識改革、そしてそのメイン・ストリームを管理職からすべての組織構成員にまで徹底させることが急務となっているのである。先の竹内教授が「全権型プロデューサー」と呼ぶ新たなるジャンルの事務職員の創造。つまり、大学に於いて行政管理の出来る資質と能力を持つ、マーケティングなどを理解した「アドミニストレーター」を育成出来る大学こそが、21世紀の勝ち組大学となるだろう。ここでは、こうした能力を備えた事務職員の創造を目指した動きをアドミニズムと位置付け、先に触れた具体的な九つのフィールドについて論じてみることとする。 2 アドミニ・マンダラ・モデルが包括する9つのマトリックス Skill 1 核としての使命 まず、その中心には大学という組織体がゴーイング・コンサーンとして存続するための Mls...

沖縄 2008 ・ 屋我地島-病者たちの遠い記憶

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今夏の沖縄家族旅行の思い出日記も今回が最終回となりました。 屋我地島 は、沖縄本島北部(沖縄県名護市、中心部から約10km)に位置し、羽地(はねじ)内海に浮かぶ島です。 沖縄本島とは屋我地大橋で結ばれており、さらに古宇利大橋で今帰仁村に属する 古宇利島 と結ばれています。 沖縄八景・嵐山展望台 羽地(はねじ)内海は、屋我地島と奥武島に囲まれた内海で、沖縄の瀬戸内海とも言われています。沖縄海岸国定公園などの指定を受ける景勝地で、嵐山展望台から一望することができます。展望台の周辺にはパイナップル畑が広がり、1階の売店ではパイナップルの試食ができます。 国立療養所沖縄愛楽園 屋我地島に「愛楽園」という名の国立療養所があります。お恥ずかしい話ですが、島に足を踏み入れてはじめて所在とともに、ハンセン病を巡る悲しい歴史と多くの人々の苦しみ、惨劇を知りました。とてもショックでした。 愛楽園について書かれた記事「 一坪反戦通信 第135号 2002年4月28日発行 【連載】やんばる便り24 」 を見つけました。  愛楽園には、これまで何度か足を運んだことがある。園内にある「祈りの家教会」(日本聖公会沖縄教区)執事の松岡和夫さん(石垣市出身)に園内を案内していただきながら、12歳で発病した松岡さん自身の体験も含め、園内外での差別や抑圧の実態、戦争中の苛酷な壕掘りや空襲・食料不足による被害などのお話を聞いた。 愛楽園のある屋我地(やがじ)島は、今でこそ橋で沖縄本島とつながっているが、1953年に屋我地大橋ができるまでは、渡し船でしか行けない孤島だった(橋は7年後=60年のチリ地震津波で流失、63年再建されたが、老朽化が進んだため、93年、現在の橋に架け替えられた)。無知や偏見から遺伝病、天刑病、悪質な伝染病などと忌み嫌われたハンセン病を患った人びとは、文字通り「島流し」され、隔離されたのである。 1938年に設立された愛楽園は、沖縄戦時には軍事施設と誤認され、米軍の集中砲火を浴びた。隣の運天(うんてん)港に日本海軍の基地があったため、その兵舎と間違われたのだ。しかし、園の建物のあらかたを焼失した一方、爆弾による死者をほとんど出していないのは、当時の園長・早田皓氏が園内の丘に掘らせた掩蓋(えんがい)付きの横穴防空壕(早田壕と呼ばれて...

アドミニストレーターの創造(2)

刀根實 氏が書かれた「 大学組織と大学行政管理職員 」のご紹介を続けます。 大学組織と構成員の関係 1 大学組織と構成員の位置関係 大学全体の組織と、その中の一部としての事務組織を考えた場合、先に述べたように、手段としての経営管理を支える教育研究機関と、経営管理機関とにまたがって事務組織が横断的に位置している。ここでは、大学における経営管理の手段としての事務組織の関係について考えてみる。 経営管理の目的は、組織体として大学の存続・成長を基本目的とし、その基本目的の実現のために、大学が現在の経営環境の中で保有している人材、組織、資金、施設・設備、システムなど経営の諸要素を組み合わせ、財政との調和によって教育活動、研究活動、社会活動として展開することである。その目的を遂行するために大学組織を構成しているメンバーが役員(理事)、教育職員、事務職員である。これら構成員の概要を要約すると次のようになる。 最初に理事などの 役員 であるが、我が国の大部分の私立大学の場合、自校の教育職員・事務職員・卒業生から輩出しているケースがほとんどである。このことは、専門管理職としての役員を大学組織内に配置していないことを意味し、アメリカの大学における理事会メンバーの約40%が企業関係者であることと比較すると、経営管理の専門性に対する意識の相違が明確に見えてくる。そのためアメリカの大学理事会では、大学の管理構造を企業の権威形態と類似しているものと考え、トップダウンの経営を支持する傾向があるのに対し、日本の大学は日本的経営を持ち込んだまま、ボトムアップの経営を第一義としている。さらにつけ加えるならば、大学の理事会メンバーは日米を問わず、一般的に言って教授団や事務職員が考えているよりもずっと保守的であることも付記しておかねばならない。 第二に 教育職員 である。当然のことながら教授会のメンバーとして、大学の教育活動と研究活動という根幹の計画を策定するという重要な役割を担っている。一部教育職員によっては、図書館長や大学付置の研究所長や各センター長として責任ある役職を任命され、大学組織から意思決定を委ねられている場合もある。それぞれの立場に応じた計画の策定と、それに伴う責任を委譲されているケースである。しかし、こうした場合はごく少数で、大部分の教育職員が意思決定に具体的に拘束...

アドミニストレーターの創造(1)

近時、高等教育を取り巻く状況が未曽有の変貌を遂げる中、危機的状況に立たされている大学は、学生の多様化や学問の変化等に迅速かつ適切に対応していくための生き残り戦略を立案し、効率的・効果的に実現していかなければなりません。 そのためには、常に自大学の比較優位性を追及し、国内外の大学間競争に打ち勝つ力を備えなければならず、経営トップの理事長や学長のみならず、大学を構成する全ての教職員が一丸となって様々な改革に果敢に取り組んでいく必要があります。 とりわけ、大学職員の職務能力の開発は、今後の大学の経営力の盛衰を占う極めて重要な要件になりつつあることは疑う余地のないところです。 今回から、大学経営人材、あるいは大学行政管理職員と称される 「アドミニストレーターの創造」 に向け、 大学職員はどのような能力を備えるべきなのか などについて、中京大学の 刀根實(Makoto TONE)氏 が書かれた 「大学組織と大学行政管理職員」 (University Organization and Administrators)という論考(抜粋)を数回に分けてご紹介したいと思います。 なお、この論考は、刀根氏が、2000年度の「大学行政管理学会研究集会」において発表された内容を基に加筆修正されたものです。 はじめに 21世紀を目前にして、教育のあり方が根元的に問われている。日本経済が情報化やグローバル化で変貌し、教育産業においてもマーケットである学生をどう鍛えるかが、それぞれの組織や国家そのものの未来を決定づける時代が到来した。そして大学を含めた我が国の教育産業は、大きな転換期を迎えることになる。ようやく我が国でも大学に、アメリカがかつて経験した学生消費者主義の時代が到来することになる。 これら我が国の大学を教育職員と共に支える事務職員も、新たな進化を余儀なくされている。新しい世紀に対応可能な、日本式大学行政管理職員を作り上げるためには何が必要で、何をしなければならないのか?これまでもいくつかの方法論が本学会を始め、いくつかのフィールドで語られてきたが、さらに具体的且つシンプルなモデルを創造し、次世代への架け橋とすることが本論の目的である。 まずは、個としての事務職員が所属する大学の組織について概括することから始めたい。言うまでもなく、我が国の大学は「教育と研...

大学職員論の変遷-2

前回からの続きです。 事務職員の果たす機能の拡大と養成 大学が「国家ノ須要二応ジル学問技芸ヲ教授シ其ノ蘊奥ヲ攻究スル」(帝国大学令1986年)ところから「学術の中心」として「広く知識を授け」「深く専門の学芸を教授研究する」場として、「知的、道徳的、及び応用的応力」を伸ばす場となり(学校教育法1947年)、今日の知識基盤社会においては、大学は「教育機能を充実し、先見性・創造性・独創性に富み卓越した指導的人材を、幅広い教養を様々な分野で養成・確保する機能を果たす役割をもち」、また、「活力ある社会が持続的に発展していくためには、専攻分野についての専門性を有するだけでなく、幅広い教養を身に付け、高い公共性・倫理性を保持しつつ、時代の変化に合わせて積極的に社会を支え、あるいは社会を改善していく資質を有する人材、即ち「21世紀型市民」を多数育成する役割をもつことになる」(我が国高等教育の将来像中間報告2004)。 大学は教育と研究を本来的な使命とするが、現在においては第三の使命として、社会貢献(地域社会、経済社会、国際社会)を大学の使命として捉える時代となっている。具体的に言えば、入学者の確保、就職支援活動いわゆる入口・出口の業務の多様化、留学生の福利厚生、奨学金業務、学生の心理・精神面のケア、生涯学習や産官学連携など幅広く業務展開を必要とされている。さらには社会・経済情勢の変化に伴い大学の経営環境は厳しさを増しつつある中で、みずから経営努力を行うことが不可欠となり、企画立案や渉外広報といった将来計画や戦略に関わる機能も要求されている。 この新しい機能と事務職員の役割についてはすでに多くの論考が発表されているが、初期の包括的なハンドブックとして、日本私立大学連盟・広報委員会編『私立大学職員入門』(1985)、日本私立大学連盟編『私立大学のマネジメント-〔職員必携〕-』(1994)の2冊を挙げる。前者は恐らく日本における最初の大学職員に対する業務ハンドブックであり、後者はその後の環境変化を踏まえ、新たな役割・機能の部分を加えた、新訂版である。後者で孫福は私立大学のマネジメントの問題点として「大学運営がまだ専門職業として成熟段階に達していない」ことをあげている。1994年段階での状況認識がわかる。前者において七澤が教学と運営、言い換えれば教員と職員は「車の完全な両輪...

大学職員論の変遷-1

近年、高等教育や大学を取り巻く状況の変化とともに、大学職員の位置づけ、役割も大きく変化していることは周知の事実です。 「教員と事務職員は車の両輪」、「事務職員は教育研究等の大学の活動を陰ながら支える黒子」といった「事務職員のあるべき姿、存在意義」に関わる考え方が、もはや古びつつあります。 現下の厳しい状況の中で生き延びていくための戦略的な大学経営等を展開していくため、事務職員に求められる役割や能力が益々多様化し、かつ高度化していくことを私達関係者は改めて認識し行動していかなければなりません。 さて今日は、こういった状況の中で、いわゆる「大学職員論」というものが、どのような構造変化を遂げてきたのか、私達はこの変化にどのように対応していかなければならないのかについて、 学校法人ノートルダム女学院 の 後藤 勝氏 が書かれた 「大学職員論の系譜(準備ノート)」 の抜粋をご紹介したいと思います。 全文をご覧になりたい方はこちらをどうぞ → 学校法人ノートルダム女学院機関誌「教育のプリズム-ノートルダム教育-【第6号】」 http://hojin.notredame.ac.jp/kikanshi/prism/06/index.html 事務職員の制度的な位置づけ 日本の高等教育は、昌平校の流れをくむ東京開成学校や医学校を合併して1877年に「東京大学」が創立されたことを嚆矢とする。東京大学は1886年帝国大学令により「帝国大学」となった。それまで専門学校として位置づけられていた私立大学も1918年の大学令により制度上「大学」となった。 2004年4月からの国立大学の独立行政法人化以前においては、国、地方自治体の設置する国公立大学と、学校法人の設置する私立大学があり、設置主体としては法人によるものと規定されていた。1949年の私立学校法の施行により、学校法人を制度化し、学校法人のみが私立学校の設置者となる制度が確立された。 1947年には教育基本法が公布施行され、教育関係の法律主義の原則が確立した。この学校教育法の第1条に「大学」が規定されている。大学はいわゆる1条校である。学校教育法第58条第3項に、学長は、「校務を掌り、所属職員を統督する」存在であり、同法第58第2項「大学には、前項のほか、副学長、講師、技術職員その他必要な職員を置くことが...

記者からみた大学広報 (4)

このシリーズも今回で最終回になりました。今回は、富所 浩介氏(読売新聞大阪本社記者)の講演概要をご紹介します。 講演の中で富所氏は、「大学の広報は内側に向いているタコツボ型で、外部に向けて組織を開き、地域社会や学生に対してアピールする力に欠けている」、「マスコミは、その情報に社会性、公共性はあるか、情報が一般の人達に有益であるかを重視している」、「マスコミは、現代社会を描く、もしくは切り取る一つの素材として大学を採りあげる」と指摘しています。 私は92年に読売新聞社に入社して以来、主に教育や司法などの分野を中心に活動をしてきました。その経験から、大学における広報のあり方について考えてみますと、言葉は悪いですが“タコツボ型と言いますか、内側に向いている傾向があるようです。つまり、外部に向けて組織を開き、地域社会や学生に対して「私たちはこういう大学です。こんな魅力があるので、ぜひ来てください」とアピールするカに欠けているように思うのです。 これからは「大学全入時代」を迎え、大学も生き残りをかけて自分たちをいかにPRしていくかが死活問題となるでしょう。国立大学は法人化という劇的な変化があり、広報にカを入れている様子が目に見えて感じられるようになりました。近年では、老舗と言われる企業がちょっとした不祥事をきっかけに世間の信頼を失って、あっという間に地に落ちていく姿がたくさん見受けられます。ブランドカがあると見られている大学も決して安泰ではありません。有名大学といえども、いっそういう局面を迎えるかは分からない時代ですので、ブランドカをさらに高めていくための不断の努力が必要なのです。 「社会性・公共性」の有無がマスコミ訴求への大きなカギ それでは、マスコミはいったい大学のどのようなニュースを採り上げているのでしょうか。端的に言いますと、「その情報に社会性、公共性はあるか」が重視されていることが分かると思います。 文部科学省の記者クラブなどでは、実に数多くの大学からプレスリリースをいただきます。しかし、単に創立何周年でイベントを行いますとか、このような講演を開きます、といった情報だけでは訴求力が弱い。絶対に掲載されないとは言えませんが、マスコミは基本的に特定の大学の宣伝になることは避け、その情報が一般の人たちに有益であるかどうかを第一に考えます。つまり、記...

戦略経営の確立に向けて

昨今、大学経営戦略の構築に関する論考の多さとともに、各執筆者の視点の広さ、知見の深さに驚き、ひたすら敬服するばかりですが、今回は、この日記でもおなじみになってきました  日本福祉大学常任理事の篠田道夫 氏が書かれた 「戦略経営を構築するための基本手法」 をご紹介します。 今回の論考では、簡単に申し上げれば、戦略的な大学経営を行うために求められる「手法」として、1)他大学が真似できない教学上、経営上の特色やスキルといった「中核能力」(コアコンピタンス)を育て強める施策、2)他大学等のベストプラクティスや一流の成果の成功要因や手法を学び、活用することを通して、自大学の改革、改善を図る取り組みであるベンチマーク手法、3)大学のミッションとそれを実現する政策全体、計画の全容を一覧化(可視化)した成果体系図(戦略マップ)の作成、4)顧客のニーズをつかみ、顧客の満足度を得る、あるいは高めるための手法であるマーケティング・マインドの活用が重視されています。 選択と集中、コアコンビタンス 戦略の策定と遂行の中で重視すべきなのがコアコンピタンス経営の考え方である。分析作業は、勢い短所や問題点、課題を明らかにすることが重視されがちだが、戦略として大学のこれからの発展の基軸は何かを考えるとき、 長所、強み、それも中心となる強みは何かを鮮明にすることが特に重要 だ。大学が社会的に存立している以上、他にない強みは当然持っている。この 他大学が真似できない、あるいは真似しようとしても難しい内部に蓄積された固有の教学上、経営上あるいは社会連携事業の特色やスキル、この中核能力=コアコンピタンスに着目し、これを育て強める施策 が求められる。これこそが差別化戦略の根幹であり、 問題点を克服、改善する施策以上に、大学の将来を切り拓く原動力 になる。 投資できる資源には限りがある。大学の中核事業の発展を考えると、 コアコンピタンスの形成と強化に連動する事業を選定し、そこに特化 することが必要となる。これが経営に「選択と集中」が求められるゆえんだ。選択と集中とは、事業全体を見直し、目的に対し、必要・不必要を明確にしていく手法で、重点事業への資源の集中の一方で、不要不急の業務の縮小や廃止は不可避である。 生き残りのためには、他大学の優位に立つための教学・経営資源は何か、逆に不必要なものは何かを...